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第10話 ※

「来て、志津真…。早く、私の側に来て下さい…」  声に導かれるように、志津真は目を覚ました。  何も考えず、ベッドから起き出し、迷うことなく真っ直ぐにあの小部屋に進む。  ドアを開き、左を見るとシングルベッドがある。その上にはやはり、艶然と微笑む美しいルイの姿があった。 「志津真…早く、抱いて…」  待ちかねたように腕を伸ばすルイに、誘われるように志津真もシングルベッドに腰掛ける。 「ゴメン。1人で待たせて、寂しかった?」  そう言ってルイを抱き締めると、志津真は大きく息を吸った。胸いっぱいにルイの匂いを吸い込むと、官能が高められた。  昨日と同じ赤いガウンを剥ぐように奪い、少し乱暴な仕草で志津真はルイを押し倒した。  それを拒む様子も無く、ルイもまた積極的に志津真の顔を両手で包み、激しく口吻を求める。何度もキスを繰り返しながら、志津真はルイの肌を好きなようにまさぐった。この肌が、滑らかさが、温かさが好きだった。  時折、ピクリと素直に反応する抱かれ慣れたカラダが志津真を夢中にさせる。 「入れたい…。もう、ルイの中に…」  まるで学生の頃のような余裕の無さに、志津真自身呆れてしまう。  だが志津真は、ルイの年上の包容力を信頼しきっていた。ルイの優しさの前なら、何の虚飾も必要ない。ただの欲望に溺れた、本能に忠実な、単純でカッコ悪い男である自分を晒すことになんのためらいも無かった。 「なぜ訊くの?いつでも君の好きなようにしていいのに」  そう言って、ルイは志津真の頬や耳に何度も唇を這わせ、大きく脚を拡げて、挑発的に絡めてくる。  こんな好色で大胆なルイが、志津真には愛しくてならない。  好きで、好きで、大好きで…。ずっと、こうしていたかった。  堪らなくなった志津真は、身を起こし、ルイを掴んで俯せにすると腰を抱き上げた。  ソコに触れると、さすがに慣れたルイはすでに準備を済ませていたらしく、スルリと志津真の指を呑み込んだ。  ルイが自分を待っていてくれたことが嬉しくて、志津真はすぐに指の代わりを差し入れた。 「ぁ…あ…あ…」  受け入れる心と体の準備は出来ていたとはいえ、ルイの中は狭く、熱く、志津真を拒むように締め付ける。 「ルイ、…ルイ…」 「は、ぁ…う…ん、しづ、ま…ぁあ」  それでもルイは志津真を貪欲に求める。それが志津真には嬉しい。  やっと、愛する人を幸せに出来たのだと思えた。  ルイの腰を掴み、奥へ奥へと侵攻すると、ルイの理性が飛びそうになった。 「や…ん…、だ、ダメ…!ソコは…ダメ、そんな…そんなに…ひゃ…あっん」  意味のない言葉を口にし出すと、志津真はニヤリとして、体を重ねるようにして、グイとさらに奥へと突き進んだ。 「ひっ…ぃ…い、いやっ…そんな…奥…いや…」  初めての最奥に志津真は達成感を感じ、何度もソコを攻め立てる。  何度も望まぬ男たちに抱かれ、愛した男からさえ、こんな淫蕩なカラダを満たしてはもらえなかったルイは、志津真に本当の自身の官能を開発された。知らなかった自分と向き合い、満たされ、心から満足し、こんな自分でも幸せになっていいのだと思うことが出来た。  ルイにとって、志津真は「初めての男」も同じなのだ。 「ルイ、愛してる…あなただけだ…」  そう言って志津真はルイの(うなじ)に口づけ、それでは足りずに歯を立てた。本能的な行為だったが、それが思わぬ興奮を高め、志津真はルイの首筋を噛んだまま、ルイの中でたっぷりと欲望を吐き出した。 「はあ、はあ…っ、…る、ルイ…。最高だ…。でも、足りない…まだ俺にはルイが足りない…」 「もっと。…来て、志津真…」  ルイも同じ気持ちなのか、ふしだらな腰つきでさらに志津真を求める。放ったばかりの志津真であったのに、ルイの中に収まったままで再び意欲を高める。 「あ…や…ぅん…、中で、おっきく…」  こんな悦びは初めてだったルイは、歓喜して身を捩り、志津真を迎えた。 「志津真…好きだ…。愛してる」 「ルイ!」  初めてだった。ルイから「愛している」との言葉が聞けたのは。  それが子供のように無邪気に嬉しくて、志津真はこれまで以上に激しくルイを突き上げた。 「ルイ!…愛してる、ルイ!」 「志津真…私も、愛しているよ…」  2人の深い愛の交歓は終わりなく続くような気がした。

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