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第13話 ※

「なあ、ウェイ~」  思い詰めていた威軍は、志津真がバスルームから出てきたことに気付かなかった。 「え?あ、…はい?」  慌てて振り返ると、そこには腰にバスタオルを巻いただけの扇情的な志津真がいる。 (誘ってる…?)  ほんの少しの期待と、後ろ向きな気持ちで、威軍はゆっくりとベッドから立ち上がった。 「なあ、今夜、泊まっていけや」  自信家のところも、冗談めかして丸め込んでしまうところも志津真の魅力だと威軍は思っていたが、今の志津真はどこか心もとない子供のようだ。  甘えるように、そしてその裏には哀願さえ感じなくもない言い方で誘う志津真が、威軍には堪らなく愛しい。  しかし、威軍は黙って首を横に振った。 「そんなこと、言わんと、なあ…」  志津真が近付き、威軍の手を取った。  その温もりを、威軍は尊いと同時に、やるせないと思った。  威軍のその先まで美しい指に、志津真が口づけた。 「お前に、傍にいて欲しいんや…」  志津真の唇が熱かった。 「ここにウェイがいるのに、我慢せなアカンのか?」  欲情が混じった、甘く、切ない、「声優部長」の本領を発揮した声だ。志津真にこんな声で囁かれて、平静でいられるわけが無い。 「今夜、お前が帰ってから、急に俺の具合が悪くなったらどうする?ん?」  そんな風に甘えながら、志津真が威軍の指を舐め始める。志津真の舌の感触まで覚えている威軍は、その舌が過去に触れた場所を次々と思い出し、官能が刺激される。  じゅるりと音を立てるほどねぶられて、もう威軍は我慢できなかった。 「しづ、ま…」  その声に、志津真は威軍の求めに気付いた。指を放し、強く威軍を抱き締め、唇を奪った。 「あ…ん、っう…」  互いに激しく口づけし、どちらからともなくベッドへ向かった。すでにジャケットは脱いでいたが、威軍は自分からシャツのボタンを外し、志津真は威軍の腰のベルトに手を掛けた。そのまま絡み合うようにしてベッドに倒れ込んだ。 「志津真、…志津真ぁ…」 「ウェイ、…好きや、ウェイ…」  繰り返すキスの合間に、互いの名を呼び、求めた。強く抱き合い、脚を絡め、息を交えた。 そこから夢中になり、さらに激しく、さらに深く求め合った。 「だ、ダメ…志津真…入れないで…」  それでも明日の出勤を思い、威軍は志津真の侵攻をとどまらせた。 「あぁ…、ウェイ…ウェイ、欲しい…全部…」  それでも夢中になって擦り寄る志津真に、威軍は手を伸ばし、行き場を失くした熱く滾った物を握り込んだ。意図に気付いた志津真も、すぐに威軍の物に触れ、2人は抱き合い、何度もキスを交わしながら、互いの性器を擦り合った。 (足りない…ウェイが、もっと、もっと欲しい…) (もっと、もっと奥まで志津真が欲しい…)  2人の想いは同じでありながら、ストイックに、たった一度の吐精だけで今夜の「語らい」は終わらせた。

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