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6話 これはただのビジネス

 扉の奥は小さな寝室になっていた。  店の外壁と同じ系統で纏めたのであろうペールブルーの壁紙に、鮮やかなゴールドが目につく大きな現代アートが飾られていることからも、表の画廊の世界観を損なわないよう絵が工夫を凝らしていることがわかる。  「どうぞ、掛けてください。」 コッパーブラウンの明るい革張りのソファに樹を座らせると、ふふ、っと絵は笑う。  「なにか…可笑しいか。」そう樹が尋ねると、  「樹さん、背が高いでしょう。それに堂々としていますし、普段は自信家が服着て歩いてるみたい。…なのになんだか今は小さく見える。…可愛い。」  そう言いながら絵は、ソファに掛けている樹の身体に覆い被さるように乗ると、軽く口付けをする。  「樹さん、これはビジネスですよ。僕が貴方を悦ばせることができたら、その時には僕に言い値で支払ってください。そうだな…値段はそのときの気持ちで決めます。大丈夫、ふっかけたりはしませんよ。そうですね、樹さんは初めてですから…パリの男娼の相場くらいかな。」  一息にそう話して絵は沈黙する。こちらの反応を伺っているようだ。  「それじゃあ絵が悦くなったら、ディスカウントされるということかな。」  そう言うなり、樹は絵の唇を熱い舌でこじ開ける。  「お手柔らかに。」吐息を漏らしながら絵は樹を受け入れる。      

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