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13話 どんな形でも
シンクタンクのパリ事務所で、一人デスクを片付けていた樹が腕時計に目をやると、秒針は20時15分といつもよりも遅い時間を指し示す。
さて、今回の出張でやるべきことは、これくらいだろう。
ラックに掛かったジャケットを左手に掴みPCを鞄に乱雑に放り込む。
あとは宜しく。
人のいないフロアを振り返り小さく呟くと樹は電気を消してパリ事務所を後にする。
夜風が肌に心地いい。昨夜は雨が降ったため街全体が湿り気を帯びている。
ころころと表情を変えるパリの街は樹を飽きさせない。
だが、明日の夜にはこの街ともしばしの別れであることに気がつくと樹は僅かに感傷的な気持ちになる。
仕事は片付けた。荷造りもほとんど終えている。あとは――――
どんな形でもよい、決着を付けなければな。
樹の足はPERSPECTIVEに向かう。
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