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第7話
生暖かい風。
木々の間からちらちらと差し込む優しい光。
湿り気のない空気。
緑の匂い。
全てが心地良かった。
ずっとここにいられたら。
その全てを吸い込むように大きく息を吸いながら
ゆっくりと目を閉じようとすると、
何かか聞こえてきた。
それは頭の上の方からこだましているようだ。
じっと、耳をすませてみる。
「………ぉーい……おーい」
誰かに、呼ばれている気がする。
閉じかけた目をゆっくりと頭上にやると、
桜の木の枝分かれした所に、人影らしきものが見えた。
再び身体を起こして顔を上げると、
昨日木の幹で寝転がっていた女が木の上に座っていたのだ。
女は孝之が自分に気づいたことが分かったのか、
にこにこと笑いながら手を振っていた。
薄茶色の長い髪は、
次第に強くなっていく風に煽られて形をすっかり崩している。
「お前は誰なんだ」
強風の音にかき消されないよう、
できるだけ大きな声で呼びかけた。
「…”てんし”、かな」
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