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第9話
3度目の夢はまた不思議なものだった。
いつもの通り、芝生で仰向けになるところから始まるのは分かっていたが、
木の上に寝そべる”天使”が桜の木の枝を折っては
下に落としてくるのである。
「おい、やめろ。頭に当たるだろ」
”天使”は楽しそうに笑い、桜の枝を細かく切っては
ぽんぽんと投げ落としてくる。
「”天使”なのに、そんなことして良いのか」
「いいの。たのしいから」
”天使の戯れ”はエスカレートし、
自分のいるところより少し遠い枝に手を伸ばそうと
身を乗り出したところで、がくんと体勢を崩した。
危ない。
とっさに木の根元まで走り寄った。
身体が異様に軽く、風の抵抗を受けずに走ることができた。
慌てて受け止めるつもりだったのに、拍子抜けだった。
”天使”は、背中からゆっくりと落ちてきて、
両腕を大きく広げた孝之の腕に収まった。
薄茶色の長い髪が重力に従ってすとんと落ち切った時、
”天使”は孝之の顔を見上げて笑った。
「笑い事じゃないだろ」
「ありがとう………」
「孝之だ」
「ありがとう……タカユキ」
大きな風の音と共に視界は徐々に白け、
またあの機械音が近づいてきた。
重い身体をのそりと起こすと、背中一面にびっしょりと汗をかいていた。
本当に、落っこちるのかと思った。
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