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第14話
可愛い、と言っていいのか。
殿上の言うところの可愛いとは、また少し違うような気がする。
何が違うんだろう。
可愛さとは、こんな感じだったか。
”天使”は白いリネン地のシャツを身に纏っていた。
身体より少し大きめのシャツは、強い風に煽られて大きく揺れていた。
その度に、顔の下にある白い首筋を伝って、
細く白い鎖骨が見え隠れする。
顔の可愛さ云々よりも、そちらの方が気になった。
素肌、なんだろうか。
白いシャツの下には何も身に付けていないようだった。
もう少し視線をずらせば見えるはずのものが、
”天使”の両手に阻まれて叶わない。
密着させた身体はとても温かく、徐々に孝之の眠気を誘っていく。
寝たらだめだ。
もう少し身体をずらせば、見えるのに。
もう少し、もう少しで。
”天使”の温もりに包まれて、孝之は意識を手放した。
「…良いところだったのに」
思ったよりも、寝覚めの良い朝になった。
身体に残った温もりは、ベッドの横にある窓から差しこむ
朝日に照らされていたからかもしれない。
今回は、えらく大胆だったな。
あんなに近づいたのは初めてだったし、身体にも触れられた。
「温かいって、夢でも実感できるもんなんだな」
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