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第17話
瞬きの音が聞こえてくるかと思う程ゆっくりと睫毛を上下させ、
透き通る青い瞳を落として来た。
瞳は、ゆらゆらと揺れていた。
何か思いを馳せている様子だったが、
読み取ることは出来なかった。
どうしたのかと、尋ねたかった。
それも視界を阻まれた後ではもう、
飲み込むしかなくなった。
生温かな”天使”の唇が、孝之の唇の上にそっと乗せられている。
身体の自由がきかない。
顔を逸らすことすら、出来ないでいた。
ようやく唇が離されると、孝之は一つ、大きく息を吐いた。
「おい。いきなりどうしたんだ。いきな…」
”天使”は再び、口を塞いできた。
孝之の下唇を自分の唇で挟み、軽く吸い上げる。
口元から舌を覗かせたかと思うと、吸い上げた下唇を、
端から丁寧に舐め取っていく。
これは一体、どういう意味なんだ。
何でいきなり、こんなことになったんだ。
ただ、聞きたいだけだった。
この景色の事を。
大きな桜の木の事を。
”天使”の事を。
思考が頭を巡っている間にも、
”天使”は孝之の唇を舐めたり、吸ったりと弄んでいる。
生温かい唇と比べて、”天使”の舌は熱を持って、赤く光っていた。
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