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第三章 出会い

誰かが入れてくれた風呂を、こんなにありがたく思ったことはない。 すっかり冷え切った身体を湯船に浸し、大きく溜息を吐いた。 夢。雨。天使。そして、電車の中で見た、あの光景。 色々なことが短い間に起こった。 これ以上の混乱は勘弁してほしい。少し休みたかった。 バスタブに背中を付け、ゆっくりと目を閉じる。 「…雨の音が、ここまで聞こえる」 外で降りしきる土砂降りの雨は、暫く止みそうにないようだ。 * 「よーっぽど、欲求不満なんだと思う」 「うるせぇ。…そんなんじゃねえ」 ハーブティーを入れたマグカップを持ってきた殿上が、 キッチンから戻ってきた。 ハーブティーは孝之が勝手に常備しているもので、 殿上はそんな雑草みたいなお茶は飲めないと、いつも嫌そうな顔をする。 「はい。女子の大好きな、雑草のお茶」 「言い方に気を付けろ。カモミールティーは安眠効果があるんだ」 殿上はどうでも良いと言って、孝之の座る大きなソファに腰を落とした。

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