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第39話

「あっついな、ここ…」 龍司は茶色いカーテンを持ち上げると、 強い日差しの入る窓を少し開けて 部屋に風を入れた。 足元で音を立てて揺れるケージの前で、 身を屈める。 孝之はソファの前に立ったまま、 ゲージの前で屈む龍司の背中を見つめていた。 部屋の蒸し暑さからか、 背中を一筋の汗がゆっくりと伝い落ちる。 浅くなる呼吸を整えようと、 息を大きく吸い込んだその音に、 龍司が振り返った。 「大丈夫ですか」 「何が、ですか」 「すごい、汗かいてますけど」 吹き出した汗が、 孝之のこめかみを次から次へと伝い落ちる。 慌てて袖で拭ってみたものの、 止まりそうにない。 龍司に目をやると、 両脇を龍司の掌に抱えられた小さな子猫が 後足をだらりとさせてこちらを見ている。 子猫と目が、合ってしまった。 「ん」 龍司は抱えた子猫を孝之に差し出した。 孝之は恐る恐る両手を伸ばし、 子猫の両脇の下に自分の掌を滑り込ませた。

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