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第62話

「タカユキ…タカユキ…」 ある晩、孝之は龍司に出会ってから初めて”天使”の夢をみた。 ほとんど自分の妄想が作り出したかのような、都合の良い夢だった。 夢とは、そういうものなのかもしれない。 「”天使”…違う、サクラ…いや、龍司か。現実の世界でお前に会ったよ」 「タカユキ……」 陽の光に照らされて温まった芝生。 その上に寝そべる孝之を、薄茶色の髪をたなびかせた龍司が見下ろしている。 青色の瞳が、ゆらゆらと揺れ動いていた。 孝之は龍司の頬に手をやると、 その顔を自分の顔に近づけた。 白いこめかみに、唇を当てる。 「現実の世界でのお前は、男だったよ。髪も長くなかったし、こんなことは…出来ないな」 「タカユキ……」 龍司は少し不安そうな顔をして、 孝之の唇を舌で舐め上げた。 いつかの夢でも、こんなことがあったような気がする。 孝之は差し出された龍司の舌を自分の唇で軽く挟んだ。 都合の良い事に、龍司は無抵抗だった。 龍司の顎の下に見える白い胸元に手を這わせ、胸の先を指で押し潰すと、 唇を捕らわれたままの龍司は鼻で大きく息を吐いた。 こんなことは、現実では出来ない。 ずっと探していたんだ。 ”天使”がサクラであり、龍司だったことも分かった。 本人にも会えたんだ。 なぜ、それ以上のことを望んでしまうんだろう。 「なぁ、龍司……俺はどうしたら良いと思う…?サクラに会いに行くつもりだったのに、 見てしまった夢に引きずられてる気がする。俺は、どうしたら良いと思う?」 そう問いかけながら、孝之は自分に覆いかぶさる龍司のみぞおちに手を這わせ、腰元を 柔らかく撫で上げた。 「タカユキ……ん……タカユキ……」 「嫌われたくないんだ。変な事を口走ったら、もう二度とサクラとお前に会えなくなるかもしれない」 だけど、止められない。 目覚めた孝之の腰元は、龍司に向けて吐き出された思いで湿っていた。

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