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第68話
「…ふーん。じゃあ酔った勢いで天使ちゃんの家に上がりこんじゃったんだ」
「…気が付いたら」
「……ふーん。ふーん。ふーん」
殿上の言いたいことはあらかた分かっている。
想いが、龍司の場所に自分を向かわせた。
否定はしない。
殿上は興味津々といった面もちで、
机に頬を押し付け伏せる孝之の頭に顔を近づけてきた。
先ほどより声のトーンを抑えて、静かに呟く。
「……ヤった?」
「…てめぇはそれしか頭にねぇのかよ」
「一番大事なことじゃん」
「相手は野郎だって…言ってんだろ」
怒りをぶつけようにも、
その体力は今の孝之には残っていない。
吐き気をこらえるように天を仰ぎ、
椅子の背もたれに体を預けた。
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