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第69話

「羽鳥くん、メールで来てた依頼、早めに処理しておいてね」 「…はい」 酔いとの戦いは、夕方になっても続いた。 吐いてしまえば少しは楽になるだろうが、 抵抗があって、出来なかった。 今日は何としても定時に帰る。 とにかく今は、休みたい。 『………ヤッた?』 昼に聞いた殿上の言葉を思い出した。 何も覚えていないことが、急に恐ろしくなる。 とんでもないことを口走ってはいないか。 何か、取り返しのつかないことをしてしまったんじゃないか。 龍司にどう顔を合わせれば良い。 目を覚ました時に見た龍司の顔を、 はっきりとは覚えていない。 口数はいつもより、少なかったようにも思える。 考えれば考えるほど、気持ちが悪くなる。 疑われないように、 嫌われないように。 少しずつ、距離を縮めたつもりだった。 それなのに。 止まらない思考にブレーキをかけるように、 パソコンのキーボードを力一杯に叩いた。 辺りが静まり返るのを感じた。

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