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お願い、僕をいじめて ①
医師からの提案は、医師が研究中の、オメガ不妊の対症療法を試してみないか、という内容だった。
説明されたそれは、アレルギー疾患の減感作療法と似かよっていて、効力を弱めたアルファのフェロモンエキスを少量ずつオメガに吸収させ、フェロモンの長期安定化や生殖器への緩やかな栄養共有を狙うものだそうだ。
エキスの原料はアルファの体液で、採取した体液を分離機と洗浄機にかけたのち、取り出したエキスを微粒子にして使用するのだという。
「やっぱり無茶がある。血液採取に変えてもらおう」
「みっくん。血液より精液の方が効果が高いって聞いて、二人で決めたでしょう?」
今二人は、防音・防フェロモンの採精室にいる。
二人で決めたとはいうが、精液の方が有用なたんぱく質や亜鉛分が多いから、と医師に説明を受けて即決したのは千尋だ。
光也は採精室に入った今でも躊躇していて、ソファにも座らず突っ立っている。
「そうだけど……いくら洗浄するからって、千尋は嫌じゃないのか?」
「全然! みっくんのなら大丈夫。ほら、早くしないと検査の人も困るから」
千尋が光也のベルトに手をかけた。光也はあわててその手を制し、体をひねる。
「千尋! なにをしてるんだ」
「なにって、手伝うよ。僕の治療のためなんだから、当たり前でしょ?」
珍しく焦る光也の顔を見ながら、千尋は当然のように言った。
「いや、待って。ほんとに。するなら自分でするから、千尋は出ていて」
「嫌だ。みっくんが僕のために頑張ってくれるなら、僕もそばにいたい。お願い、させて」
千尋は光也に張りつくように身を寄せ、細い人差し指で光也のスラックスのファスナー部分をなぞった。途端に、千尋の肩に置かれた光也の手と、ファスナーの奥に隠れたものの緊張が伝わってくる。
「みっくん……座って」
千尋はとうとうファスナーを降ろし、狭い隙間から指を忍び込ませた。
息を殺して沈黙している大きな身体は、抗うすべを知らないかのように千尋の体重に押され、あとずさってソファに沈む。
千尋はしゃがみ、光也の膝を割って顔を寄せた。
「待って、千尋。俺、今日は抑制剤を持っていないから、どんな醜態を晒すか……」
今日は抑制剤を持っていない。
言葉が引っかかりはしたが、発情の香りを含んだ光也の汗の匂いと表情、布越しに触れる硬いものにすべての思考を侵され、千尋は膝をついて光也のスラックスを下ろした。
スラックスとともにずれた下着から、ぶるんと勢いがついた肉の塊が飛び出す。
思わず目を見張り、息を呑み込んだ。
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