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番外編Ⅱの④

 ────それで、これだ。 「千尋、今日はこれを使って気持ちよくしてあげるね。これで射精を我慢してフェロモンを溜められたら、きっと今度の血液検査の数値が良くなると思うよ」  光也が用意したのは、三十センチほどの横長のガーゼと、光也のフェロモンローション。そしてハンドカフスにコックリング。  入浴のあと、防水シーツをしっかりと敷いたベッドに横たえられて、すぐにカフスにチェーンを繋がれた。 「??? ガーゼ、どうするの?」 「モトさんに教わったんだ。痛くするだけがマゾプレイじゃなく、とことん焦らすのもマゾプレイだってさ」  甘やかして甘やかして、けれど千尋は虐められている気分を味わえる上、治療効果を格段に上げられるはずだと、モトが光也に耳打ちしたのがこれだ。 「ガーゼローションプレイって言うんだって」 「ガーゼロ……ぁんっ」  ローションで濡らした手で陰茎を数度上下されただけで、千尋のペニスはツンツンになる。すぐにコックリングで根元を締められた。 「すっごく気持ちいいらしいよ。女の人が弱いところを持続刺激されるくらいの快感だって言ってたから、今日は千尋、女の子になっちゃうかもね」  なんということでしょう。KANOUのみなさん。叶専務が変態なお言葉を発していらっしゃいますよ。でもこれを聞けるのは僕だけです。  頭の中でアナウンスをしながらも、千尋の瞳とペニスの先はもう露を垂らしている。  どんな感じになるのか想像はできていないが、あれだけ拒否してきた光也が少しでもマゾプレイを試みてくれるのも、感激で昂る。 「じゃあ、始めようか」  大きく脚を開かされ、その間に光也が入ってくる。風呂上がりで上半身裸のため、引き締まった肌が瞳に艶めかしい。  光也は用意したカップにローションを入れると、ガーゼを浸して雫が垂れるほど濡らした。 「本当は持ちやすいように中心だけ濡らすようだけど、俺は手が大きいから大丈夫だろうってモトさんが教えてくれてね。それに、びしょびしょのほうが気持ちいいみたい。……乗せるよ」  ひたぁ……。 「……っひぅっ……!?」  おかしな声が漏れた。  先端を覆うぬらりとした感覚に、喉がひくついた。ローションは人肌程度に温められているのだろう。熱くて大きな舌のような感触で、ガーゼが亀頭に吸い付いてくる。  まだ乗せられただけ。それなのに、じわじわと先端が快楽に包まれ、鈴口から体内へ伝わる管にも波及していく。 「ぁう、う……なんか、なんかおかしいよ」 「もう? 千尋、まだなんにもしてないけど腰がくねってるね」  そっとガーゼに触れられ、ガーゼが少し浮いた。 「あっ、だめ、触っちゃだ……あ、ぁあっ、いやっ、ふぅううん!」  浮いたガーゼを戻されて、鈴口に舌を入れて吸われたときの、いや、それ以上の快感が押し寄せた。千尋のペニスに細い血管が浮く。  何故か触れられていない乳首までぷくりと勃ち上がった。 「へえ、本当にそんなに感じるんだね。亀頭って確かに敏感だけど、千尋は特に敏感だもんね」  ぺろっ……表面の薄皮を剥くように乳首を舐められる。 「や、や……駄目、いっしょ、ダメだったらぁ!」    ちゅ、くちゅ。  ぺちっ、ぺちっ。  乳首を規則的に吸われながら、亀頭にガーゼを浮かしては落とし、浮かしては落としを繰り返される。  そのたびに鈴口を吸われ、やられたことはないが、尿道を責められているような気分になった。  明らかに後孔をほぐされているのとは違う刺激が下腹部を疼かせる。  ぺち、ぺち、ぴたっ……。  たっぷりと濡れているのに、亀頭に接する際にガーゼの繊維の目がかすかに感じられて、それがまた刺激になる。  手とも唇とも違う、この感じ。言いようがなくて、千尋は腰を左右に揺らしながら生理的な涙をこぼした。 「ああ、もっとほしいんだね。いいよ、してあげる」 「え? 違……ああぁ!」  光也がガーゼを両手で持った。ずり、ずり、と、ゆっくり左右に揺すられる。 「や、だ、だめ。あっ、ひっ、むり、それ、無理だからぁ! 許して、許してみっくん!」 「許すなんて、俺は意地悪をしているわけじゃないだろう? これはいつも頑張っている千尋へのご褒美だよ?」  甘い声を耳に囁きながらも、光也は片手でローションガーゼを持つと、段差の上すべてを包んで(ひね)るように手首を回した。 「ひゃ、あ、ぁ、あ、んん~~!」  ぎゅんぎゅんという擬態語がぴったりなほど、尿道を快感が駆け上がる。前立腺があるところまで響いて、千尋は魚のように身体を跳ねさせた。膝もガクガクしてしまう。 (出ちゃう、出ちゃう……!)  でも、射精できない。  もう出ちゃいそうだと思うのに、コックリングのせいだけではないと思う。  物理的ではなく身体の芯が「あとちょっと」のところで反応を止めている。

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