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第15話

「俺を……構いたくなる……?」  そんな物好きは奏一くらいしかいないのではないかと思えた。 「まぁ、放っておけないってことかな。  こうして飯食うことに誘ったのは、君と距離を早く縮めたたかったから  真っ直ぐに真剣な目で奏一は見つめてきた。 「俺の勝手な行動だったけど……迷惑だったかな」  自嘲気味に笑う奏一を見て、何故かユイトの心はギュっとつままれたようになった。 「な、何言ってんだよ……そんなことねぇけど……」 変な空気になってしまったと、ユイトは内心少し慌てる。 「ってかさ、今さら聞くけど、あんた、ゲイ……なんだよな?」  奏一と出会ったバーが、ゲイバーだったなら、そこにいた奏一も多分ゲイなのだろうとわかる。ホテルに行かないかと誘ってきたわけだしわかってはいたが、何となく直接奏一の口から聞くのはこれまで躊躇っていたのだ。 「うん。まぁね」 さらっと奏一は答えた。 「他に相手いねぇのかよ。俺はできねぇって言ってんだろ……」 「いないよ、今は。前は……いたけど……。いたらこうして君と会ってない。俺は何人も相手にできるほど、器用じゃないから。それに、君とできないからって……そんなことは俺にとっては重要な問題じゃないよ。まぁ、俺はしたくないこともないけど……無理強いはしたくない」  触れては来ないのに、ふんわりと包むように接し、それでいてどんどんと奏一はユイトの心の中に入ってきた。一体何を考えているのだろうと、ユイトにとっては不思議でならない。 「なんか……あんたってわけわかんね……」 「あはは。良く言われるよ。俺は、単に君と友達になりたいと思っただけなんだよ。  あ、そうだ。ユイト君さ、釣りって興味ない?」   ユイトにはどうしていきなり釣りの話が出るのかまるでわからない。  つくづく変な人だと思った。  ただ、釣りと聞いてユイトは子供の頃を思い出した。父と一緒に渓流釣りなどに行ったことがあったのだ。そう言えば湖にも訪れたことがあったような気もする。忙しくしていた父と遊ぶ機会は多くなかったかもしれないが、それでもユイトにとっては大切な父との時間だったし、良い思い出だ。 とは言え、ユイトが大きくなってからは一緒に釣りに行く機会もなかったし、父がいなくなってしまった今となっては、もっと釣りなどに行っておきたかったとも思う。 「俺、釣りが趣味なんだ」  奏一の言葉で、ユイトは物思いから引き戻された。 「へぇ。そういや釣り好きそうに見えるかもな」  思いつきでそう言ってみる。 「はは、そうかな。まぁ、湾に釣りに行ったり朝早く起きて遠くに釣りに行くこともあるよ」 「わざわざ釣りのために早起きかよ」  自分なら寝ているほうが良いなとつい思ってしまう。 「うん。遠くに行くなら早く出なきゃいけないからね。ユイト君釣りは?」 「すげぇ情熱だな……俺はガキの頃以来やってない」 「じゃあさ、今度一緒に行かない?もしよかったらだけど」 「そうだな。たまには、釣りも悪くない」  ユイトは、久々に釣りをしてみようかと考えた。普段インドアなユイトだが、奏一となら出掛けてもいいかと思える。 「じゃ、行く?」  その問いに、ユイトはコクンと頷いた。

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