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第23話

「ふーん……そっか。で、気持ちは伝えたの?」  エリは振られたというのに、興味津津といった感じに聞いてきた。 「いや、まだだけど」 「え~?言わないと何も始まんないじゃない」  とても正論ではあるが、ユイトとしては告げることがなんとなく躊躇われる様な気がするのだ。ただ好きだからということで、告げられるならまだいいが、自分はホストをしているし、奏一といつまでも一緒にいられるかわからないと思ってしまう。ユイトと付き合うことで、何か良くない影響が起きないとも限らないし……。第一、ユイトのことは弟のように思っているだけかもしれないのだから。 「そうだけどさ。気持ちに気付いたの割と最近だから。それに、言いにくい面が色々とあるんだ」 「平坦な恋じゃないってことね?」 「まぁ、そうかな」  “蓮”として会話に徹しなければいけないと思っていても、自分自身をさらけ出していっている様な気がする。自分のことをこうして話したのは、初めてかもしれない。 「あ、そうだ。なんかイベント毎とかないの?相手の誕生日とか」 「え?あ……そう言えば、来月誕生日だって言ってた気がする」 「じゃ、やっぱりその日は逃せないわね!二人でお祝いとかできればいいんじゃない? 誘ってみれば?」  確かに、奏一には誕生日を祝ってもらったし、自分も一緒に過ごしたい。早いうちにその日のアポを取っておくべきだろうか。 「そうだな。予定空けておいてもらうことにする。ってかさ、エリさん俺のこと応援してくれるの?」  何気なく思ったことだった。普通は失恋したら落ち込むだろうし、振った相手の恋を応援するなどできる女はそうはいないだろう。 「私だって、今は辛いんだよ。でもね、大事なのは蓮君の幸せだから。蓮君が幸せになれるなら、私は応援したい」  そういってエリは朗らかに笑った。本当は心中辛いだろう。きっとそれを隠しているに違いない。 「エリさん……ありがとう」  ユイトは心が痛くなった。女性に甘い言葉を囁くホストであっても、ユイトにだって心はある。エリには申し訳なく思ってしまうのだ。 彼女は、店には今後も来てくれるのだろうか。 「ううん、いいの。最近ね、蓮君前より穏やかな感じがするなって思ってたの。表情もちょっと柔らかくなった気がするし。きっと、その人のおかげなんだね?」 「え、そうかな」  まさかと思った。完璧に”蓮”になっていたつもりだったのだが、エリにはわかっていたというのだろうか。エリは夜の仕事をしているわけではないそうだが、接客の仕事をしていると言う。そのせいもあって、人の洞察力などが秀でているのかもしれない。 「まぁ、ちょっとした変化だと思うけど、いつも幸せなんでしょ?」 「……そうだな……」  素直にそう言えた。なかなか奏一に想いを告げるのは上手くいきそうもないと思うが、それでも繋がりが持てているのは幸せなことだった。 「そっか。それはいいことだね……あの、さ。蓮君にお願い聞いてもらってもいい?」 突然、エリがおずおずと切りだした。 「え、何?」 「私、そんな頻繁にお店に来られるわけじゃないけど、私が来たら、毎回アフターしてくれる?」 「……あぁ。別にいいけど。それでいいの?」 「うん。私は、今までどおり会えればそれで良いの。二人きりの時間が持てたら、嬉しいから。もし、蓮君が良ければだけど…」  エリは顔を赤くして俯いた。  そして、ユイトはエリのサラサラのロングヘアを撫でた。

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