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四十一 溶け合うような
「ふっ……、んっ……、は……っ」
口から勝手に声が漏れる。じゅぷじゅぷと、風馬が指を抜き差しする。性器を直接刺激するような快感ではなかったが、間違いなく、それは快感で。
(なに、これ……)
指が、肉輪を貫いて奥へと挿入される。その指が、入り口近くまで引き抜かれる。ずるっと、内壁を擦りながら抜け出る感覚が、ぞわぞわする。これが、気持ち良い。これが、アナルセックスの良さなのだと、うっすらと気が付く。
(ま、待って、待って……)
徐々に、穴が解れているのが解る。筋肉は柔軟で、慣れるほどに拡張されていくようだ。それはつまり、今は指一本ではあるが――。
「……二本くらい、入りそうですね」
「っ!」
風馬の言葉に、思わずガシッと腕を掴む。思いのほか、慣れるのが早い。正直に言えば、指一本など、痛くも痒くもない。
「だだだだ、ダメだよ……?」
「……解ってます」
――それ「(解ってない)」だろ! 絶対にダメだからなっ!
ギッと涙目で睨みつけると、風馬は少し残念そうな顔をして溜め息を吐き出した。ホラ! 解ってない!
「まあ、今日は、我慢します。……せっかく、一太さんが許してくれたんだし」
「そ、そうして……」
今日はというところが気になるところだが、今はそれどころじゃない。風馬の長い指が、ぐちぐちと内部を弄る。グッと奥へと押し込まれ、引き抜かれる。甘い快楽が、痺れになって疼き出す。
「ん……、は……っ、ん……」
「前立腺って……、ドコですかね……」
「し、知らんっ……」
風馬の指が、内壁を探すように動き回る。その度に、ハァハァと息を殺して、唇をかみしめる。
「……一太さん、気持ち良い……?」
言いながら、勃起した性器に触れる。みりゃ解るだろと言いたかったので、答えずに無視する。風馬は掌で転がすように俺の性器に軽く触れ、それからまた手を離した。正直、もうイってしまいたかった。けど、もう少しこの焦れるような快感を味わっていたくもあった。それが風馬の手でもたらされていると思うと、酷く背徳的だ。
やがてくちゅくちゅとナカを探っていた指が、僅かにソコをひっかいた。
「んぁっ……!」
「あ――。ここ? なんか、少し……」
「わっ、ばかっ……!」
ひときわ強い快感に、ビクッと身体が揺れる。その一点を擦られると、妙に熱くなってくる感じがした。
「あっ、あ……、あ……!」
「……一太さん、可愛い……」
風馬の唇が、声を漏らす唇を塞ぐ。舌で咥内を弄られながら、アナルを弄られる快感に、つま先が知らずに伸びた。シーツを蹴って、足をばたつかせる俺に、風馬が指を引き抜く。
「あっ……」
急に止められ、物足りなさに思わず風馬を見上げる。アナルのヒダが、収縮しているのが自分でも解った。
「スミマセン、俺も、限界で……」
「あ……」
そう言って、風馬はスラックスの前を寛げ、下着をずらすと、猛った性器を取り出した。何もしていないのに、既にパンパンに膨らんでいる。思わずじっと見てしまう俺に、風馬はクスっと笑った。
「一太さん、四つん這いになって」
「え? ……あの?」
「入れないから、安心して」
「……」
疑っているわけではないけど。何をする気だろうと思いながら、言われた通りに四つん這いになる。無防備な尻をさらけ出すようで、ちょっと恥ずかしい。
「ふ、風馬……?」
風馬は俺の後ろに回ると、脚を僅かに開かせ、脚の間に性器を挟み込んだ。先日と同じように、スマタをするということのようだが――。
「お、おいっ……この体勢……っ!」
「良いでしょ? これくらい」
言いながら、風馬がゆっくりと動き出す。背後から犯されているような姿勢に、カァと顔が熱くなる。
「っ、ん……」
セックスじゃないのに、セックスだ。風馬に、犯されているような錯覚に、背徳感がじわじわと湧きあがる。
「……は、……っん」
「一太さん……」
風馬の指が、ぬぷっとアナルに入り込んでくる。再度挿入され、驚いて振り返る。
「ちょっ……ん!」
じゅぷじゅぷと後ろを弄られながら前を擦りつけられ、快感に身体が震えた。この体勢でアナルまで弄られたら、もう。
「あ、あっ! あ……!」
「一太さん、好きです……、一太さん……」
「んっ……、あ、あ……」
風馬は腰を打ち付けながら、ずっと「好きだ」と繰り返し続けた。
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