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「··········ん」  カーテンの隙間から漏れる日差しに、ぼんやりと開けた目を照らされる。すると、起きたばかりでぼうっとしている頭が徐々に冴えてくるのが分かるのだ。  まだスマホのアラームは鳴っていない。もう少し寝ていられそうだと目を閉じると、なにやら背に違和感があった。  嫌な予感がした俺は恐る恐るちらっと後ろに目を向けた。すると、すやすやと寝ている翠の端正な顔が真後ろにあったのだ。 「ーーっ··········!!」  驚いた俺は反射的に離れようとするが、腹にがっちりと回された腕がそれを許さなかった。なんとか逃れようと身をよじると、 「綾人くん、力弱くて可愛い」  女の子みたいだね、と寝起きの細い声が耳をかすめた瞬間、昨晩の出来事が一気に頭の中に流れ込んでくるのだ。 「っ··········!」 「あー、ごめんね?そもそも綾人くんのこと女の子にしちゃったの俺だもんね。大丈夫、ちゃーんと責任取ってあげるからさ」  俺の思考などお構い無しに頭を撫でてくる翠が腹立たしくて堪らなかった。 「·····責任とかいらない。つかそういうの重いから。そもそも俺達そういうのじゃないだろ。昨日とかも「付き合っちゃう?」なんて心にもないこと言ってたし」 「なーに、綾人くん。随分とつれないね」 「·····俺は、いつだって本気なのにさ」  小さく呟く翠に、今なにか言ったかと問いただそうとした時だった。  ーーごりっ  背に押し付けられる感覚にびくっと肩が揺れると、翠は笑った。 「ごめん、勃っちゃった」  昨日の綾人くんエロくてさあ、と衣類越しに割れ目に押し付けられるそれは熱くて、腰をぐっと捕まれて逃げられなくなると、服に擦れながらも奴の先端に窪みを探し当てられてしまう。 「··········っぁ·····ッ」 「見っけ」  背後から俺をすっぽりと包むすいが、まるで宝物を見つけた子供のように楽しそうな声を落とした時だった。 「ーー綾、起きたか?」  翠に初めて手を出された時と同じ状況に、背筋が凍りついた。扉の裏側から呼びかけられる声に反応できない俺を見る翠は、何かを企むかのように口角を上げた。

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