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「しおんにぃ! 俺も!」 「ん?」という顔をする紫音の唇に自分の唇を押し当てた。 驚きで目を瞠る紫音に、悪戯な笑みを見せていると、ふと頬を染めた。 「可愛い⋯⋯シたくなっちゃう」 「えっ、⋯⋯あ、えっ⋯⋯と」 急に紫音からそう言われるとは思わなく、シてくれても構わないけど、明日の仕事に支障が出るのではとしどろもどろになっていると、「困らせてしまったね」と苦笑を漏らした。 「言葉にしてしまうほどがっついているように思うよね。ごめんね」 「いやっ!むしろ、しおんにぃの方が負担になるんじゃないかと思ったところだし」 「僕のことを真っ先に気にかけてくれたの? 本当に朱音は優しい子だね」 「しおんにぃだからだよ」と言いかけたが、ゆっくりと慈しむように撫でてきて、彼が満ち足りた顔をするものだから、されるがままになった。 「っと、朱音といつまでもこうしていてもいいけど、呼んだ目的はこれじゃない」 玄関を閉めた紫音が、「こっちにおいで」と優しく手を引く。 「そういえばさ、何で呼んだの? 嬉しいけど」 「花火を見せたかったんだ」 「花火?」 玄関から短い廊下を歩き、隔てた扉を開いた先、シックな色合いのカーテンを引いた。 ベランダの先に広がる、宵闇。しかし、紫音が言っていた花火らしきものは見当たらない。 「花火、ここから見えんの?」 「そうだって不動産の人が言っていたけど⋯⋯まだみたいだね。時間があるから、飲み物用意するね」 「俺も手伝う!」 「朱音はお客さんだから、ゆっくりしてて」 「でも、手伝おうとした心遣いは受け取るね」と頭を撫でて、さっき脇目で見たダイニングへと行ってしまった。

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