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「しおんにぃ、俺のことを想ってくれてありがとう。とても嬉しい。俺が具合が悪くなる大概の理由は、俺のせいなんだから、しおんにぃが自分のことのように責めなくていいんだって」
「でも、どんな理由であっても、朱音が苦しんでいることには変わらないよ」
「そりゃあ、そうだけど⋯⋯」
紫音を納得させる言葉が見つからず、言い淀んでしまった。
どう言えば紫音は納得するんだ? と考えるよりも前に、考えるのが面倒になった朱音は、「とにかく!」と声を上げた。
「今は元気! ちょー元気なんだから、心配しなくていいんだよ! それよりも花火を楽しもうぜ!」
「う、うん、そうだよね。ごめんね、朱音」
「謝るのも禁止! しおんにぃは何も悪くない!」
手首をぐいぐい引っ張って、ベランダに行こうとした時。
完全に暗くなった夜の空に咲かせる花火が見えた。──のだが。
「あ、花火始まってる! てか、遠っ!」
「思っていたよりも、遠いね⋯⋯」
二人は呆然とした。
朱音達がいる場所からだと、手のひらサイズほどの位置関係だった。
「見える範囲、なのか? いや、見えなくはないけど⋯⋯」
「一年通してじっくりと考えれば良かったよ⋯⋯。とはいえども、早めに決めないといけなかったし」
「しおんにぃ、他の季節も楽しめると思う」
「? どういうこと?」
首を傾げる紫音ににっこりと笑った。
「今だって、どんなに花火が遠くても、しおんにぃと一緒だったら楽しめるし!」
目と口を開いて驚いていた。
誇らしげな表情になっていると、何か言いたげな口の形になったかと思えば、口を引き結んで、持っていた飲み物を差し出した。
首を傾げつつ、「ありがとう」と受け取ると一口飲む。
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