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「今さら気づいたけど、このジュース、昔めっちゃ飲んでたジュースじゃん」
「朱音に何を飲ませようかなと探していたら、見つけたんだ。美味しいよね」
「別に俺に合わせなくていいんだって。しおんにぃが好きな物にしなよ」
「朱音が好きな物は、僕も好きな物だよ」
「⋯⋯あぁ、そう」
紫音の家庭環境を考えると、自分の意思を抑えつけられたものだから、自分が好きだという物がないに等しいのだろう。
だから、平然とそう言うが、さすがにここまでくると引いてしまうのが正直なところだ。
これから、朱音だからではなく、自分の好きな物を見つけられたらなと切に願う。
「花火綺麗だね、朱音」
「ん」
「来年も一緒に見られたらなって思うよ」
「それは、俺もそう思うけど⋯⋯。しおんにぃ、これから知名度が上がっていくだろうし、そしたら、プライベートを見られたらマズイんじゃない? しおんにぃ見た目がめちゃくちゃいいからさ、ファン増えるだろうし、恋人の、ましてや男と付き合っているところを見られたら、危ういんじゃ⋯⋯」
『芸能人 付き合う』と検索をしてみたところ、『デートは基本、お互いの家! カフェなどに行くとパパラッチに撮られて、名前や住所をネットに晒されてしまう可能性がある!』『恋人がいること時点でファンに妬まれる可能性大!』と、それはもう不安を煽る記事ばかりが出てくる。
自分がきっかけで、戦隊俳優がやりたくてなった紫音を応援したいが、原因とも言える戦隊モノに会わなければ良かったとさえ思ってしまう。
そしたら今頃、比較的自由に恋愛が出来ていたとも。
「そうなったら僕、俳優を辞めるよ」
「⋯⋯はぇ?」
聞き捨てならないことをなんてことないように言うものだから、変な声を出してしまった。
「しおんにぃ、今何て言ったの?」
「僕のせいで、朱音が危険な目に遭うのならば、俳優を辞めた方が得策かと」
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