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8.※ディープキス
「さ、それよりも床を拭かないと。服にも溢れてない? 拭く物を持って、く──っ!」
立ち上がろうとする紫音の手首を掴んだ拍子に、その唇に唇で触れた。
「⋯⋯ど、うしたの、また⋯⋯」
「慰めの、チュー」
照れくさそうにそう言葉を紡ぐと、頬を染めた紫音は口元を手で覆った。
「⋯⋯本当に、朱音は⋯⋯」
呆れ、というより、愛おしくてたまらないと、体までも震わせているのが分かった。
その手をそっと頬に添えられると、スッと目を細められた。
「朱音。キスしてもいい?」
「えっ、あ、いや、そんなの聞かなくても、俺さっきからしてるし、しおんにぃの好きにしていいよ」
改めてそう聞かれると、恥ずかしく思う。
頬が熱くなる朱音に「ありがとう」と微笑んで、優しく触れた。
紫音らしい触れ方に嬉しく思ったが、それで終わらせようする紫音に不満に思い、思いきり口付けた。
角度を変え、紫音の唇の形が自分のに馴染んできた頃、紫音の舌が差し込まれた。
荒々しく絡め合うかと思いきや、朱音の息に合わせるようにややゆっくりと絡めてくる。
まどろっこしいと思っていたが、先ほど飲んだジュースが紫音との唾液と混じり合い、無邪気だった小さい頃の懐かしい味が、大人を極端に知ってしまったいやらしい味へと変わり、背中がゾクゾクと疼いていくのを感じた。
その感覚をもっと味わいたいと、誘うように積極的に絡めると、一瞬動きが止まったように見せかけて、角度を変えつつ、動きを速めていった。
それでも、互いの息が上がってきた頃、紫音から口を離してしまった。
「しお、に⋯⋯っ」
「⋯⋯朱音⋯⋯。そんなにも、積極的にやってくれたら、キス以上のことをしてしまうよ」
「いいよ⋯⋯してよ」
足の間のを含めて、ここで終わってしまったら、正常な気持ちでいられない。
その意味を含ませて言うと、興奮が冷めやらない様子の紫音がふっと微笑んだ。
「分かった。⋯⋯お風呂に入ろっか」
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