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Encounters.

桜舞い散る中で見つけたのは、木の下で1人で花びらと戯れる華奢ともいえる小柄な同じ制服を着たアイツだった。小さい躰にそれに釣り合うように乗せられたような小さい頭。 最初は後ろ姿。舞い散る桜を見ながら振り返ったその顔は色白で、その小さな頭には不釣り合いなくらいの大きい瞳がキラキラとしていて細く高めの鼻梁に小さな唇がほんのりと赤みをさしている。 桜の木の下でこれから迎える新入生の案内として腕には自分と同じ腕章をつけている。 一言で言うなら『可愛い』女のようなその顔はもしかしたら噂の『彼』かもしれなかった。1年の頃から噂は聞いていたが同じクラスになったこともなく、男子校だというのに『可愛い女顔のヤツがいる』とは聞いていた。 さして興味もなかったから、名前も知らないし顔を見るのは初めてだった。ただ、通称だけは知っている。 『見守るだけのお姫様』 男子校だからといって男が男に必ず盛るわけではない。彼女持ちも多いし、学校でできることといえば、せいぜい文化祭で小柄な生徒を女装させてコンテストを楽しむ程度だ。 確か1年の文化祭の時に最初に女装させられて 『あれならありかも』 と思わせたことが発端らしいが、その後に猛アプローチの猛襲を食らって泣き出してしまったことがあったと聞く。 男が高校生にもなってめそめそしてるのもどうかと思うが、男はまだ成長期でもあるし、これから顔つきも変わっていくだろうと思っていたが、3年の春に1年生のような幼さを残したその顔は、童顔なのだろうが、この先もそれほど大きくは変わっていかないだろう。 携帯で時間を確認するとそろそろ新入生が来る頃だ。いつまでも桜の花びらの下で舞姫になっていてもらっては困る。 「そろそろ配置に着いてくんねぇ?そこで舞っててもここにいる意味ねぇから。」 「……あ……ごめん……もうそんな時間になってた?でもさ、桜の花が散る時って好きなんだ。本当に咲いてる時間が短くて儚いよね」 「……さぁ?俺はあまり興味ねぇから、わかんねぇけど桜は気付いたら咲いてて気付いたら散ってんな、くらいの感覚だよ。あんた名前は?」 「三島伊織。キミは?」 「森下悠斗、3年E組。いおりって女みてぇな名前だな」 「そう?伊織は元々男の名前だよ?宮本武蔵って知ってるでしょ?あの人の養子になった息子も伊織。女っぽいって言うよりも古い名前かな」 そう言って微笑む顔は本当に女顔だった。 何故だろう……加虐心をくすぐられる。 ――この顔を歪ませて泣かせたい…… ふと湧き上がったこの感情はなんなのだろう? 「あ、俺も3年E組。これからよろしくね。」 「……あぁ、よろしく……」 ――卒業までコイツを知らなければよかった…… この出逢いが2人の人生を狂わせていった。

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