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Classmate 4

「元々、父は転勤族なので、受験が終わる頃までは両親もこっちにいたんです。急な転勤で戻らなくちゃならなくて、でも俺は学校決まってたし、再受験する気にもなれなくて。寮もあったからそのまま残ることにしたんです。実家、って言っても賃貸なので、今はかろうじてそこにいるってだけなんです。行く行くはどっちかの実家に入るんだと思いますけど、東京とは名ばかりの田舎なんですよ。祖父母のとこは。」 戻るには遅くなりすぎた。入るならこのタイミングだろうと足を進める。 「……あれ?まだ食ってねぇの?」 「あんたを待ってたんでしょうが。ほんと、伊織くん可愛いね〜。今日は泊まってきな。これだけ可愛いと暗い夜道は危険だから。」 「高校生男子に失礼だとは思わねぇのかよ?3年だぞ?3年!!」 「こんだけ可愛かったら、酔っ払いは区別つかないわよ。あんたは猛獣に見えるだろうけどね」 「猛獣ってなんだよ。なぁ、猛獣姉。」 お互いに言い合っているが、他人から見たら2人は姉弟だとすぐにわかるくらい似ている。性別が違うだけあって、線の細い女性的な顔をしているのが千佳で、男らしくしたのが悠斗だ。 伊織が可愛いと表現されるなら、千佳も悠斗も顔の作りは整っている。標準的に見ても美形に入る顔立ちだ。もし、女子が学校にいたなら、噂にはなっていただろう。告白された、付き合った、そんな噂が耳に届いてたかもしれない。 「ちっ……本当に可愛くない。」 舌打ちをしながら末の弟を睨みつける。 「可愛いとか思われたくねぇし。まぁ、家に腐るもん置いてなきゃ週末だし、泊まれば良いんじゃね?この家は姉ちゃんがルールだからな」 「わかってんじゃん」 鼻高々に肯定することでもないだろうが、家事全般は誰に似たのか、姉が仕切っている。 「誰も姉ちゃんには頭上がんねぇじゃん。母さん家事からっきしダメだし。お姉様がいないと俺も飢え死ぬし。」 そんな会話に三島はクスクスと笑っている。 「いいなぁ、俺、小6時に兄貴死んでから1人でさ。その兄とも年齢が離れてたから、世話された記憶しかなくて……生きてたらこんな感じで話し出来たのかな、って。羨ましいよ。」 「三島くんもうちの子になっちゃいな?一気に三人兄弟増えるよ?あ、三島くん、何月生まれ?」 「僕は4月生まれなので、もう18になっちゃいました。クラスで1番背が低いのに、たぶん誕生日はいちばん早いです。」 「へぇ、何日なの?」 「4月5日です。千佳さんと森下は何月?」 「私は早生まれだから2月12日の水瓶座。」 「三島、俺より誕生日早いって、俺ずっと末っ子のままじゃん。12月24日のクリスマスイヴ。嬉しくもなんともねぇ日だわ。ケーキもクリスマスケーキと一緒だぜ?」 「へぇ、なんか森下の誕生日ロマンティックだね。今年は受験でドタバタだけど少しの時間ならお祝い出来ないかなぁ」 三島は嬉しそうに告げるが、クリスマスイヴに男2人で誕生日を祝うとか寒すぎるだろ、と思うがここで口を出すと千佳がまた口を挟んで来そうなので黙ったままでいた。 『誰がケーキ焼いてやってると思ってんだ!!感謝はされても文句言われる筋合いは無いと思うけど?』 そう言われることは目に見えていた。

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