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Classmate 6

そのまま悠斗は沈黙をする。少し考え込んでしまった。もし自分が女だったら……? 「ねぇ、ちょっと、そこで黙らないでよ。疑っちゃうじゃん……」 「……何をだよ」 「……何って……まこちゃんとあんた……どっちが受け……?」 「……はぁ?頭沸いてんのか?確かに一緒にいるのは楽だけど、恋愛感情なく姉ちゃんに結婚させられそうになってんのか……って考えてたら……想像つかねぇって思ってたとこだよ。」 クスクスと三島は笑い出す。 「いいなぁ、幼なじみ。俺、転々としてたからそういう友達いなくて。学校でもあんな感じだからさ、友達っていう友達が出来なくて……」 「男子校の悲しい(さが)だよな……」 「なにそれ?」 「三島は『見守るだけのお姫様』って言われてんの。1年の時から噂は知ってたけど、そこに俺は興味はなかったからなぁ……今年の入学式の日に俺は初めて三島を見たし、その時に名前も知ったってわけ。文化祭の女装コンテストで2年連続優勝してるから、今年は無事に殿堂入りするんじゃないか?」 「……嬉しくない」 「だろうな。でも、1年の文化祭の優勝の時に集団で告られて泣いたって話はマジ?」 「……本当。だって怖かったんだよ?!」 「なーに?学校でそんな話も出来てないの?」 「もっとエグい話はしたぞ?風呂で襲われる危険があったとか、寮で夜這いされるかも、とか。それが原因でアパート暮らしになったとか。」 さすがの千佳も少し引き気味に 「……ナマモノをこんな至近距離で聞きたくないわァ……」 「ナマモノって言うなよ。本当に腐ってんな。」 「まこちゃんと三島くんのカプならナマモノでも綺麗かもね。」 「……それは無いな……」 「……ないでしょうね。わかってるわよ、それくらい。言ってみただけじゃん。」 ますます三島の中で『真琴』がどんな人物なのか気になり始める。二人の会話の流れからして、千佳は元腐女子であることは何となくわかった。が、現役ではない。 『真琴』という人物は外見は美人の中身は男らしい人。そもそも男らしいの基準も人それぞれ違うから、自分の基準と照らし合わせてみないとわからないもなだとは思う。 千佳が『猛獣』や『コレ』と呼ぶ『森下悠斗』は伊織にとっては羨ましいものをたくさん持ってる存在だ。見目がいいこともそうだが、持ち物はシンプルかつ使い勝手が良く、背丈も高いし、顔の作りは千佳とよく似ているが、まもなく成人する男らしさも見え隠れしている。体育の時に知ったことだが、躰は細マッチョタイプだ。男から見てカッコイイタイプの男性が悠斗のようなタイプだと思う。 そして、成績。必ず学年のトップ3の中に名前があることは伊織も知っていた。伊織も10位以内には居るものの、悠斗に追いつけたことはない。上位3人は入れ代わり立ち代わりの接戦攻防を繰り広げていた。一学期の中間テストでも2位だった。期末でどう交戦していくのか、は3人にしかわからないだろう。 他のふたりに比べて悠斗は絶対にトップをキープしたい、と思っているタイプではない。 『3位以内にいれば大学の推薦取れやすいだろ?』位の感覚でいる。それも事実であるが、敢えて口にはしていないだけだ。 「やっぱり、森下と同じ大学行きたいな……誰も知らないとこよりも、なんか、森下いた方が楽しそう。俺に普通に接してくれるのあの学校では森下くらいじゃない?」 「そうか?喋るヤツ増やしたいなら簡単に増やせるぜ?でも、三島は受験組?推薦狙うクチ?」 「推薦取れたら推薦がいいけど、森下は確実に取れるだろうなぁ……」 「それはわかんねぇけど、担任に打診してみるか。第3希望くらいまで絞ってみるのもいいかもな。目指すとこが同じなら、苦手なことも色々と補えんだろ。」 その言葉に伊織は首を傾げた。

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