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Sleep With 2
2人がかりの看病で、月曜の朝にはかなり回復して、学校には行けるくらいにはなっていたが、心配した千佳が車を出してくれた。
「悠斗、帰りはどうする?」
普段なら聞かないことを言われ、ため息をついてから
「……心配なんだろ?姉ちゃんはどうしたいの?俺は姉ちゃんの言う通りにするけど?」
「出来れば、数日分の荷物と着替え、冷蔵庫の中身の確認。それ終わったら住所メールして」
「しばらく、姉ちゃんのメシを食え、っていう司令が出たけど、三島は1人になりたい?」
「……千佳さんの命令は絶対なんでしょ?」
「俺はな。でも三島は違うだろ?」
「森下が怒られるのは可哀想だから、千佳さんに従う。余計な心配をかけさせたくないし」
その気遣いが出来るのに、なんであんなに下半身が緩々なのかが謎だった。
『誘われれば断らない』
千佳の夕食はしっかり食べて、帰宅したら部屋にいることが多そうに見えたが、いつ誘われて、躰を繋げているんだろう……という疑問。
一度はあの凶器のようなデカいモノを受け入れなければならない。ただ、その時はあの部屋ではない、と本人が言うのだから、あの部屋に泊まっても手を出してくることは無いだろう、と思う。関係を続けたい、とも言わない。
悠斗は他人に対する執着がないようにも思えた。たぶん、きっとそれは間違ってはいない。
「千佳さーん、お久しぶりっす!!またメシ食いに行っても良いですか〜?」
千佳を見つけた同級生らしき複数人の生徒たちに声をかけられていたが、
「あんたら来るとあたしが休めないから、来なくていいよ〜!!これからは受験に専念しな。」
躊躇なく返す返事に、千佳に胃袋を掴まれた生徒たちが撃沈していく姿を目の当たりにしている気分だ。なんの感情も持たない目が――過去にそいつらを誘って自宅に招いたであろう人物は、それを黙って見ていた。
食べさせ好きな姉の為に、寮生や一人暮らしの生徒を誘ったりしていたのだろう。
その言葉だけを見てしまえば『シスコン』と思ってしまうだろうが、そんなものが当てはまるような関係性ではない。言葉こそフランクで言葉遊びをしてるような会話をしているけれど、『姉の命令は絶対』の中に隷属のような意味合いが含まれてる気がしてならない。
姉弟にしては、この弟、が従順すぎる不自然さ。兄弟という存在をわずかな期間しか記憶にない存在であっても、自分の主張はあった。
それが千佳を相手にする悠斗には見られない。高校3年生にしては姉に対する態度が完璧過ぎる気がした。千佳の言葉の裏を読む。
学校では伊織以外にも悠斗の周りには必ず人がいる。悠斗自身は賑やかな方ではないが、周りはとても賑やかで、普通の高校生らしく笑っている。家では姉を立てながらも軽口を叩いてはいるものの、姉の意見は絶対だ。
週末も部屋で伊織の看病と言えど、静かすぎるくらい足音も立てずに移動していたように思う。機微に目敏く、伊織が目を覚ますと『飯食えそうか?』『喉乾いてないか?』『熱冷まし貼り替える』最低限の言葉だけしか発しない。
そうかと思えば、サディスティックな一面も見せる。同意だけど、嫌がられるのが好き、嫌がりながらも快楽に堕ちていくのを見るのが楽しい、泣き顔に興奮する、女も男も抱けるけれど固定の相手は作らない。人が好きなのか嫌いなのか、の判断がつかない。
その人間性に興味が湧いてきてしまった。
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