4 / 6
第4話
チリーン……――。チリーン……――。
風鈴の音がまた聞こえる。暖かい風が肌を優しく包み込み。その風は風鈴の短冊を靡かせ、楽しそうに歌わせる。
「あっ……はぁっ……」
それは凄く居心地が良くて、気持ち良くて。ずっとそこに居たくなる。オレはうとうととまどろみながらその感覚を味わう。
「ぁ、ンっ……」
掌にドロっとした感覚。それは手にべったりとこびり付き、真っ赤に染まっている。
「ひぃっ!」
飛び上がったオレの太ももはヌルッとしていて、目の前には穂積の顔。離れて寝ていた筈なのに。
チリーン……――。チリーン……――。
オレは寝ぼけて穂積の布団に入り込みオナニーしてた?そう思ったらゾクンッと肌が粟立ちザラりと感覚が背中を這う。
チリーン……――。チリーン……――。
風鈴の音がなぜ、背後で聞こえるんだろう。
「良樹……――。良樹……――」
なぜ、耳元で聞こえるんだろう。
「なんで……?」
「良樹……――。良樹……――」
「どうして……?」
オレの名前を呼ぶの?オレはいつその名前を知ったの?
「まさみ、さん……」
振り返った先には、確かに男性がオレにしなだれかかる様に立っている。
「やっと、ボクの名前を呼んでくれたね」
風鈴の音のような、涼やかな声音。その声が聞こえた瞬間、ドクンッと心臓が脈打ち目の前が真っ赤に染まる。
「かはっ……ぐっ、ごほっ……」
バシャバシャと体内から吐瀉物がこぼれ落ちる。
「ゔっ……げほっ……」
内臓が焼けるように熱くて痛い。吐き気がとまらない。
「あっ、ぐっ……」
「良樹?良樹……――。良樹……――」
頭が割れそうに痛い。内臓がすべて出てしまいそうなほど苦しい。
ともだちにシェアしよう!