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その日から日が経ち、緊張と不安が最高潮に出てしまった、祭りの当日。 なかなか眠れずにその日は欠伸がよく出てしまい、何度も碧衣に、「やっぱ、やめておくか?」と心配そうな声で言われたが、首をブンブン振って、「大丈夫っ!」と無理やり笑顔を作った。 これ以上碧衣を始め、色んな人達の迷惑を掛けてはいけない。住まわせてもらっているのだって、結構迷惑を掛けているのだから、今日はちゃんとお礼も兼ねて碧衣と祭りに行かなくては。 うん、と頷いて自らを鼓舞する。 「葵人様。中に入ってもよろしいでしょうか」 女中の一人が障子越しに声を掛けてくる。 「あ、はい。いいですよ」 そう声を掛けると、腰を下ろし、丁寧に障子を開け、「失礼します」と葵人に一礼すると、その後も数人同じような作法をし、入ってくる。 「そろそろ、お祭りの準備をさせてもらいます」 「もう、そんな時間なんですね。分かりました」 葵人がスっと立ち上がると、すぐに女中らが周りを囲み、そそくさと着ている浴衣を脱がし、持ってきた浴衣を着せられるのだが。 「え、えと··········? これは、間違いなのでは·····?」 「奥様からの贈り物でございます。何か気になる点でも·····?」 「·····あ、いえ·····何でもありません·····」 ものすごく突っ込みたいのだが、はて?という顔をしている女中にもこれ以上言えないと思い、半ば諦め気味な気持ちでいる葵人に、「さ、こちらに座ってください」と化粧台の前に案内された。 この姿だから、化粧するのは当たり前なのだろうだが、何だか複雑な気分である。 化粧を施され、この日のために肩ぐらいまで伸ばされた髪を小さく団子にすると、そこに簪を挿される。 「完成です。素敵ですね、葵人様。ちなみに名前にちなんで、浴衣の柄や簪は葵の花となっています」 後ろにいる女中はそう言って顔を綻ばせていた。 十七の時に、兄と関係を持たされてから徐々に女性のような身体付きになってしまい、自身の身体に嫌悪感を覚えているため、この格好が妙に似合ってしまうのが複雑であるが、きっと義母は、「可愛いからよしっ!」という理由でこんな格好をさせたのかもしれない。 自身は男として生きるべきなのか、女として生きるべきなのか、更に悩んでしまっていると、「入っていいか?」という声が耳に入ってきた。

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