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6.
歩幅を合わせてくれる碧衣と共に玄関から一歩、外へと踏みしめる。
約二年ぶりの外は、夏だとはっきりと分かる空気が、むわっと葵人らを包む。
この感覚は久しぶりだと思いつつ、無言で手を引き、歩もうとする碧衣に続こうとしたが、足が竦んでしまった。
「やっぱやめておくか?」
「ううん! 行く! 皆、この日のために準備してくれたでしょ。無駄にしたくないよ」
「⋯⋯そういうことは気にしなくてもいい」
「でもっ! ⋯⋯んと、綿あめ食べたいし!」
綿あめを食べたいのは事実だ。昔から大好きな物だったし、それに去年、祭りに行けない葵人のために碧衣が持ってきてくれた大切な思い出もある。⋯⋯自分でもわけが分からない恥ずかしい行動も思い出してしまったけど。
碧衣はふっと笑った。
「⋯⋯そうだな。行くか」
いつもより半分以下の歩幅で一歩歩き出す。
そのちょっとした気遣いに笑みを浮かべながら、今はすっかり思うように動く足で一緒に神社へと目指した。
小さいとは言ったものの、そこそこの大きさの神社の境内に所狭しと色んな屋台が軒を連ね、黒岩や女中らが、それぞれの屋台で焼いていた。
そんな色んな匂いを漂よせた境内の前に見慣れた二人が、葵人と碧衣に手を振った。
「あれ? どうしたの、碧衣ちゃん?」
「⋯⋯こっちが聞きたいんだが」
「ヒィ!? ちょ、ちょま! いや、だって、黒岩さんに誘われたんだよ! タダで屋台の物を食べれるからって! 待てよ!!」
ツカツカと山中の方へ怒りを露わにした碧衣は今にも殴りかかりそうに拳を振り上げているのを、山中は慌てて言っていた。
そんな二人を見ていると、「え? もしかして、葵人?」と声を掛けられた。
その驚いた声を上げている方へ向くと、きょとんとした石谷と目が合った。
「え、うん。そうだよ⋯⋯?」
「マジっ!? なんで女の格好してんの?」
「あ、それは⋯⋯」
先程の出来事を話す。
話終えると、「あ〜、なるほど〜⋯⋯あの人ならやりかねないな」と苦笑していた。
「だが、こう言っちゃなんだが、その⋯⋯可愛い⋯⋯な。碧衣ちゃんは山中 と仲良くしているようだし、俺と一緒に──」
「──葵人は、俺のだ」
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