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グイッと肩ごと抱きしめられ、視界が碧衣の浴衣でいっぱいになった。 「あ、碧衣、君⋯⋯?」 恐る恐る彼の顔を見上げていると、険しい顔で石谷の方を睨んでいた。 「ヒュー♪」 「ふーん·⋯⋯? お熱いことで。じゃ、邪魔な俺らは、さっさと消えますよ」 山中と石谷の声が聞こえた後、二人の足音が遠ざかっていく。 「⋯⋯」 屋台の忙しない声がよく聞こえる。 しばらくしても拘束を解こうとしない碧衣に声を掛けると、「⋯⋯わりぃ」と緩めてくれた。 「⋯⋯えと、ありがと⋯⋯?」 「⋯⋯」 「⋯⋯僕は、大丈夫⋯⋯だよ?」 「⋯⋯俺が大丈夫じゃない」 「え?」 「行くぞ」 再度手を握られ、だが、腰に手を回され、より密着する形となる。 「碧衣君⋯⋯? ちょっと歩きづらいんだけど⋯⋯」と言っても、彼は無言のまま歩き出す。 一体どうしたのだろう。 一人首を傾げつつ、鳥居を潜る。 「わぁ⋯⋯」 小さな歓声が上がった。 夜の帳が降りた中に提灯や屋台の灯りで照らされ、輝いていた。 それがより一層葵人の心の底から楽しませるものとなって、気づけば駆け出していた。 後ろから、驚いた声を上げ、呼ぶ声が聞こえたが、葵人の耳には一切届かず、ヨーヨーの屋台へと行った。 「いらっしゃいませー! 葵人様! どの色のヨーヨーを取りますかっ?」 「うーんと、青色のを取ろうかな」 いつもの浴衣とは違う、朝顔柄の浴衣を着た女中から、紙紐に括りつけた針を受け取ると、取りやすいようにと、他のヨーヨーを取って、狙っているヨーヨーの輪っかの部分を葵人の方へ向けさせていた。 この感覚、小さい頃兄と一緒にやった時、屋台のおじさんがやってくれたな。 お礼を言いながらその事を思い出し、小さく笑っていると、「葵人っ!」と少し怒っている碧衣が後ろから来た。 「お前、急に走り出したら危ないだろーが! 怪我でもしたら──」 「取れたぁ!」 「は?」 ヨーヨーのゴムの輪っか部分に針を引っ掛けた紙紐を高く上げ、後ろにいる碧衣に見せつけた。 後ろでは、「おめでとうございます!」と拍手する女中の声が聞こえた。 「はい、これ碧衣君のね。今度は僕のを取らないと」 針から取り、碧衣の手を取って、その上に乗せると、意気揚々と次のヨーヨーを取る。

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