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7.
グイッと肩ごと抱きしめられ、視界が碧衣の浴衣でいっぱいになった。
「あ、碧衣、君⋯⋯?」
恐る恐る彼の顔を見上げていると、険しい顔で石谷の方を睨んでいた。
「ヒュー♪」
「ふーん·⋯⋯? お熱いことで。じゃ、邪魔な俺らは、さっさと消えますよ」
山中と石谷の声が聞こえた後、二人の足音が遠ざかっていく。
「⋯⋯」
屋台の忙しない声がよく聞こえる。
しばらくしても拘束を解こうとしない碧衣に声を掛けると、「⋯⋯わりぃ」と緩めてくれた。
「⋯⋯えと、ありがと⋯⋯?」
「⋯⋯」
「⋯⋯僕は、大丈夫⋯⋯だよ?」
「⋯⋯俺が大丈夫じゃない」
「え?」
「行くぞ」
再度手を握られ、だが、腰に手を回され、より密着する形となる。
「碧衣君⋯⋯? ちょっと歩きづらいんだけど⋯⋯」と言っても、彼は無言のまま歩き出す。
一体どうしたのだろう。
一人首を傾げつつ、鳥居を潜る。
「わぁ⋯⋯」
小さな歓声が上がった。
夜の帳が降りた中に提灯や屋台の灯りで照らされ、輝いていた。
それがより一層葵人の心の底から楽しませるものとなって、気づけば駆け出していた。
後ろから、驚いた声を上げ、呼ぶ声が聞こえたが、葵人の耳には一切届かず、ヨーヨーの屋台へと行った。
「いらっしゃいませー! 葵人様! どの色のヨーヨーを取りますかっ?」
「うーんと、青色のを取ろうかな」
いつもの浴衣とは違う、朝顔柄の浴衣を着た女中から、紙紐に括りつけた針を受け取ると、取りやすいようにと、他のヨーヨーを取って、狙っているヨーヨーの輪っかの部分を葵人の方へ向けさせていた。
この感覚、小さい頃兄と一緒にやった時、屋台のおじさんがやってくれたな。
お礼を言いながらその事を思い出し、小さく笑っていると、「葵人っ!」と少し怒っている碧衣が後ろから来た。
「お前、急に走り出したら危ないだろーが! 怪我でもしたら──」
「取れたぁ!」
「は?」
ヨーヨーのゴムの輪っか部分に針を引っ掛けた紙紐を高く上げ、後ろにいる碧衣に見せつけた。
後ろでは、「おめでとうございます!」と拍手する女中の声が聞こえた。
「はい、これ碧衣君のね。今度は僕のを取らないと」
針から取り、碧衣の手を取って、その上に乗せると、意気揚々と次のヨーヨーを取る。
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