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その後も女中のお陰ですぐに取れ、「ありがとうございます」と言って別れた後、「待たせちゃって、ごめんね」とヨーヨーを持ってない方の手を握る。 「あ、あげちゃったけど、ヨーヨー好きじゃなかった?」 「いや、別に」 「そうなんだ。良かった。僕ね、あんまり取るの上手くないから、兄さんに取ってもらっていたんだ。あと、弾ませるのも上手くなかったかも。それも教えてもらって、今はちゃんと出来るようになったんだ!」 「あ、そう⋯⋯」 弾ませているところを見せたが、そっぽを向いているし、素っ気ない返事だ。 碧衣君、どうしたのだろう。 暑さでイライラしているのかと思い至り、「ねぇ、次はかき氷食べよ!」と手をぐいぐい引っ張る。 「分かった」と言って、かき氷の屋台へと赴く。 「碧衣様! 葵人様! やっぱり、暑いですから、かき氷でも食べたくなりました?」 「そうなんです。かき氷二つ下さいな」 「承知しました! 少々お待ち下さいね」 金魚柄の浴衣を着た女中はにっこりとすると、かき氷機の取っ手部分を思いきり回す。 ガリガリという音と共に、細かくなった氷がキラキラと宝石のように、羽のように落ちて、器へと落ちていく。 この光景を見るだけでも楽しくつい無我夢中で見ていると、あっという間に山盛りへとなる。 続けざま二杯目も山盛りとなると、「どうぞ! シロップはご自由に!」と片手ずつ持って渡してくれた。 それをそれぞれお礼をし、受け取ると、「どのシロップにしようか」と碧衣に話しかけた。 「俺は、ブルーハワイで」 「じゃあ、僕はイチゴとレモン!」 「二つもかけるのか。欲張りだな」 「うん、だって──」 「《《兄さんが好きだった》》なんだろう?」 「うんっ! よく分かったね」 「まあな。行くぞ」 「あ、うん⋯⋯」 屋台のすぐそばに設置されていた席に座ると、かき氷を食べ始める。 さっきの不機嫌さに怖いと思っていたが、かき氷を食べた途端そのことはすっかり忘れて、思わず顔が綻ばせていた。 「美味しいね」 「そうだな」 「ねぇ、僕のかき氷をあげるから、そっちのブルーハワイの食べたいな」 「いいぜ」 嬉しそうに笑ってかき氷ごと渡してくるかと思っていたが、ストローの先が丸くなっている物でかき氷を掬うと、「ほら、あーん」と差し出してきた。 碧衣がそんなことをしてくるだなんて、珍しい。 けど、恋人みたいで嬉しいと思って、差し出されたかき氷を食べると、「ブルーハワイも美味しい」とにっこりと笑った。

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