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9.※攻めキス

「だろう?」と碧衣も一緒になって笑っていたら、口を開けてきた。 ふふっと笑って、葵人もさっきの碧衣と同じように、その口に掬ったかき氷を食べさせると、「二つの味が混ざってわけ分かんね」と笑っていた。 「だけど、贅沢な感じでいいでしょ。これも兄さんに教えてもらったんだ」 「⋯⋯また、あいつの話か⋯⋯」 「え?」 「来い」 「え、えっ? ⋯⋯っ!」 スっと真顔になった碧衣の表情に身を竦ませている葵人を無理やり引っ張り、ずかずかと拝殿の方へ連れて行かれる。 「碧衣ちゃん様! どうされました!?」 「黒岩さん、こっちの方に誰も近づかせないようにしておいてくれ」 「承知しました」 リンゴ飴を作っていたらしい、碧衣の護衛でもある黒の浴衣を着た黒岩がいつもの不思議な呼び方で呼び、碧衣のそばに寄ると、命令を聞いた途端、リンゴ飴を持ちつつ、警戒体勢となる。 その後ろ姿を見たのも一瞬で再び無言となった碧衣の後ろ姿を見て、一体急にどうしたのだろうとまた思っていた。 「ねぇ! 碧衣君! 待って!」 手首を掴む手が痛いことから、さっきの会話で機嫌を損ねてしまったようだ。 僕、悪いことをしちゃった。 足がもつれそうになりつつ、涙目になっていた。 拝殿の裏の木が生い茂っている中に連れ込まれ、謝ろうとした時、木に背中を押しつけられる。 小さく悲鳴を上げた葵人の唇に、乱暴気味に碧衣が重なる。 触れるほどではない、荒々しいキス。 全く嬉しくもなんともないキスに、息も吸えず、涙を零し、されるがままとなっていた。 怖い。怖い。怖い。 これでは兄と同じではないか。こんな想いあってくれないキスなんてして欲しくもない。 碧衣の浴衣を掴んでいる手で必死になって引き剥がそうとはするものの、いとも簡単に取られ、両手も木に押しつけられる。 しばらくそうされていると、急に唇が離れた。 やっとだと思い、全身が脱力し、その場に崩れ落ちる、かと思っていたが、両手が拘束されているせいで無理やり立たされていた。 「⋯⋯お前が、悪い」 息を吐きながら不機嫌そうに言われた。 ああ、やっぱり僕が悪いんだ。 視界が滲み、碧衣の顔がまともに見れなくなる。 そうだとしたら、碧衣に『遊んで』もらわないと。

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