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第22話 なれたように

「なんか、しょっちゅうこさせてもらって悪いね」 「俺の方こそ、来てもらってわるいです。俺に友達がいないばかりに」 「はは、俺だっていないから、いっしょだ」  なれたように俺の家に来た直哉さんはテーブルの席に着いた。直哉さんの前にひとつカップを置く。出したのはイチゴのムースだ。デザートメニューの試作になる。  直哉さんは手を合わせてそれをたべた。 「おいしいね。これも動物性不使用だよね? 牛乳使ってないの?」 「そうです。これは豆乳とアーモンドミルクですね」 「アーモンドのミルクなんてあるんだね」 「牛乳の代替えはいろいろあるんですよ。飲み物はコーヒーでいいですか?」 「ありがとう」  自分には麦茶をいれ席に着いた。自分のぶんのイチゴのムースをたべる。もう何度も試作してほぼ完成なので問題なくおいしい。 「いつもコーヒーですよね」 「そうだね。よく飲む」  店でもコーヒーだけど、うちに遊びに来る時もいつも直哉さんはコーヒーだ。  おっかなびっくりな友達になりませんか発言からたびたび直哉さんを家に呼んでいた。最初は店の試作が余ってという理由を作っていたけども、直哉さんは気楽に応じてくれるので、そこからゲームをしよう、映画をみないかというお誘いから、家具の組み立てを手伝ってほしいとかも言うだけ言ってみたら、電動ドリル持参できてくれて手際もよかった。本人曰く暇を持て余しているから嬉しいとのことで、暇つぶし半、同情半という感じだと思うのだけど、勧めた動画を家で見てくれたりもしてくれて、そもそもフットワークが軽い人なのかもしれない。 「知花君はあんまりコーヒー飲まないね?」 「嫌いじゃないんですけど、麦茶の方が好きです」 「たしかに、麦茶よく飲んでる」 ふっと笑う。店でただの客としてランチを食べているときは感情をこぼさないクールな人だという印象だったけど、意外とよく笑う。その全部が優しい。ただ優しすぎるから、俺を子供に見ていて、誘いに応じてくれてるのも、お父さんがこどもに付き合っている感じなのかもしれない。こっちからしたら10歳ほどの違いなんてそんな離れてないよと思うのだけど、下から上をみるのと上から下を見るのは違うんだろう。さらに、そういう普段の優しさから、実際にお父さんではないかという疑念もあるけど、名前の件もあって、聞くに聞けてない。

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