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第25話 映画
こんな簡単にことが運ばれていいのだろうか。今日まで待ち遠しくすごし、その間に、映画の1、2,3、を家に呼んで一緒に見た。ほんとに直哉さんが暇でフットワーク軽い人でよかった。久しぶりに見ると、1、2はCGと人形感がすごく強くて時の隔たりを感じた。3は1、2より最近なので映像的にはきれいだけど、当時の感動ほどはよくはない。ストーリーが単調で小さなテレビでみると迫力も薄い。きれいなCGになれた今では不発に入るのかもしれない。3をはじめて見たと話す直哉さんも、当時に見たら確かによかったのかもね、という感想だった。
「すみません遅れて」
もう季節は冬になっていて、ショート丈のPコートをちゃんと着こなしてる直哉さんは遠目で立っている姿も、近寄っても、とてもかっこいい。
「大丈夫。そっちこそ渋滞、災難だったね」
映画館のあるショッピングモールで待ち合せていた。待ち合せはなんという甘美な響きなのか。いつも、店終わりに誘うか、休みの日に家に来てもらうかなので、初めて店の前で待ち合せた以来だ。さらにこうして、外で会うのは初めてだ。なのに、事故渋滞に巻き込まれて数十分の遅刻をかましてしまった。
「時間、間に会うかな。とりあえず行こうか」
映画館の前に行くと見ようと思ってた回が始まってしまっていた。
「どうします?」
少しだったので、今から入るのもなくはないけど、どうせならちゃんと最初から見たい。
「予約とってたわけじゃなし、次のにしようか」
「はい」
次の回まで時間はあるので、なにか食べに行こうと言う話になった。ほんとなら映画を見てから、うちに誘って遅めの昼にしようと思っていたけど、外でご飯の後の映画はいかにもデートっぽくていいと、お花畑になりかけてたところで、はっとする。
「ヴィーガン食さがします?」
「厳密なヴィーガンじゃないから、いいよ」
そういわれても、この人がいままで動物性由来のものを食べてるのを見たことがない。あのハンバーグも食べるといいつつ気は乗らなそうだった。直哉さんがどういった理由でヴィーガンに目覚めたのかもよくわからない。本当に健康のために試しにやっているなら、やぶってもいいのかもしれないが、年季が入った皮財布以外、服もカバンも靴も動物性由来のものを身に着けているところをみない。もし信仰めいたものがあるのなら、軽はずみに敗れるものじゃない。
「ちょっとまってくださいね」
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