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第41話 パニック

 今日は休みで、とくにすることもなくだらだらしている。なにか試作でも作ろうかとダイニングをうろうろしていて、でもすぐに立ち止って、机の上の花を見てしまう。ハーバリウムは今日もきれいなままにそこにあって。  直哉さんとカフェではちあわせてから二週間たったけど、まだ直哉さんは来店していない。  やっぱりもう来ないのかもしれない。直哉さんは妙にふっきったように優しくて、たくさん感謝してくれた。あれは俺に対して別れの選別だったのだろうか。でも、しない口約束をする人ではない。  携帯が珍しく鳴った。どうせ仕事の電話だ。画面をみると紺谷君だった。紺谷君から電話が来るのは初めてじゃないだろうか。 「休みにすみません。父さんを知りませんか?」  すぐに話し出した紺谷くんはあせった様子の声をしている。 「父さん? 紺谷君の? いや、知らないけど?」  意味がわからなかった。 「そうじゃなくて、いや、今どこですか?」 「家だけど、」 「すみません、いまから送る場所に来てもらってもいいですか?」 「わかった」  紺谷君は電話でもわかるぐらいパニックになっているので会った方がいいだろうとすぐに向かうことにした。  画像が送られてきた場所は、バッテイングセンターの近くのマンションらしい。部屋番号もついで送られてくる。直哉さんの家もここらへんじゃないかとよぎり、なにか嫌な予感がした。  とりあえず玄関にむかい、少しでも急ごうと車で行くことにした。  初めて来たマンションは家族向けのようで、すぐ横の公園では親が幼い子供を遊ばせている。  指定された部屋のインターホンを鳴らすと紺谷君が出てきた。 「すみません、来てもらって」 「お邪魔します。どうしたの?」 そのまま廊下を通された、リビングは綺麗だけど、探し物がみつからないと言うように机の上に書類がぶちまけられていた。ここはどこなんだろう。紺谷君が一人暮らしをするには大きすぎる。 「父さんがいないんです。連絡がつかなくて、」 「その父さんって」 紺谷君が対面キッチンの一角を指さした。そこには、ちょうどうちにあるような白と緑と黄色のさわやかな色合いのハーバリウムがあった。 「知花さんの好きな、ハーバリウムの常連さんは俺の父です」 「は?」  時空がゆがむ。

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