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第43話 故郷
「連絡はしたんだよね。いつから返信ないの?」
「昨日の朝、連絡してそこから返信がなくて。父さん携帯見ないからいつも返信は遅いんですけど、その日の夜には返信来るから、おかしいなって。それで今日来たら、この封筒があって。それにここのところ変だったんです。急に変わったというか、母さんのこととか、父さんの偏食のこととかいろいろ話してくれて」
紺谷君は少しヒステリックに早口になっている。
「うん。じゃあ、昨日から連絡がつかないってことだね。どこかに行くとか聞いてない?」
「具体的には聞いてないです。でも、最近、母さんの父親が亡くなったんです。それで、家を売るからって荷物がここに届いてたみたいで、ついでにっていろいろ整理していて。父さんは母さんとの故郷に帰ってるんじゃないかと思うんです。父さんの両親は都内に引っ越していて、母さんの母親もとっくに離婚して家を出てます。両親は駆け落ちなんです。母さんの父親が死ぬともう住んでたところに親類がいなくなる。逆に戻れんるんじゃないかなと、でも俺は、その両親の故郷をどこか聞いてない。息子なのに」紺谷君の声は不安定で大きくなったり小さくなったりする。「こんな時頼れる人もいなくて、少し前、帰ってきたとき、知花さんと出かけたこと話してたから、父さんが誰かと一緒に出かけるなんて今までなかったから、すごく仲良くなったんだと思って、知花さんに連絡しました。すみません」
どちらかというと、クールでひょうひょうとしたコミュ強のイメージだった紺谷君の中身はナイーブなのかもしれない。
「大丈夫、紺谷君は悪くないよ。ちょっとまって、それなら故郷のことはきいてる。力になれると思う。地図開ける?」
おおかたの場所は聞いていた。後のお嫁さんである初恋の彼女と出かけた場所だ。自分の携帯で石川の温泉街を検索すると何件か出てきて、それを紺谷君にも地図で表示してもらった。温泉街から近くで、灯台があり、灯台の近くに大きな公園がある場所はすぐに特定出来た。
「行こう。ちょうど車で来てるから乗せてくよ」
車は近くのパーキングに置いている。
「ありがとうございます」
「心配しなくても、大丈夫だよ。この前、また店来るって約束したし」
本当になにもないって俺は信じる。
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