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第50話 光栄

「えっと、その、男と、というか……」  露骨に直哉さんの下腹部に視線を這わせてしまった。俺は直哉さんを見て触って、キスをしてでそれなりに気がすむけど。 直哉さんは俺の視線に気づいて笑った。 「やっぱり、たつかわからないから、知花君がしたいことがあるなら何でも、望んでくれるなら手でも口でもしてあげるけど、君はいつも女役してるの?」 「えっと、俺は別にこだわりないんでいつもとはかぎらないですけど、直哉さんに突っ込むとかは考えてなくて」 「そうなの? じゃあ、俺が女役でもいいかと思ったんだけど、駄目か」 「えっ、マジで?!」  敬語がはずれて、慌てて口をおさえる。  その発想はなかった。ノンケのもてる系男子がネコにまわることなんてありえない。 「大丈夫です。全然できます。えっ、いいんですか?」  ふだんノンケとするときはネコだけど、ゲイとするときは相手に合わせる。直哉さんとなら当然ネコだと思ってたから、まったくの想定外だ。思考をギュインと急カーブして目玉を入れ替えて直哉さんをみる。こんないい男を組み敷けるなんて、さいこうだ。一気に興奮した。 「無理しなくていいよ? どう見ても俺おっさんだし」 「違うんです。直哉さんノンケだから女役無理だろうなと思ってたから。いいなら、めっちゃつっこみたいです」 じぶんの鼻息の粗さがヤバい。欲望が隠せない自分にひく。でも直哉さんはひかないでおもちゃをに喜ぶ子供を見るみたいに微笑んでくれてる。 「そう。俺が全く初心者だから、教えてくれる?」 「はい」  先に体を洗いたいと軽くシャワーを浴びさせてもらった。直哉さんにも準備をレクチャーしてシャワーを交代する。その間に近所の薬局で至急ゴムとローションを調達した。ゴムとローションを机のめだつ位置に置くと、出てきた直哉さんはそれに気づいた。 「買ってきてくれたの? ありがとう」 それに笑って対応してくれる。シャワーから出たら冷めてるのではと、これを見て引くようならやめようと、わざとこれみがしに置いたけど取り越し苦労だったようだ。包容力のでかい大人の男すぎる。抱いてとだきしめたいけど、抱けるらしい。嘘みたいだ。  直哉さんに近づいた。ゆるめにきたバスローブから胸元が見えている。じっと見てると、手をつかまれて胸元を触らされた。湯上りの肌はあたたかくしっとりしている。 「こういうイベントが久しぶり過ぎて、わくわくしてるんだけどね、俺まだ立たないと思う。でも知花君の事は好きだし、君にきもちよくなってほしいってちゃんと思ってるから」 「わかってます。好きに触っていいですか?」 「もちろん、どうぞ。俺も触っても」 「ひかない?」 「ひかないよ。男女の性行為だとどうしても生殖がともなうから、ただ純粋に触りたいから触る性行為って新鮮だな」  直哉さんは俺の服を脱がしてくれた。そして胸元にそっと触れる。 「知花君は身体もかっこいいよね。ほんとにこんなおじさんでいいの?」 「俺、年上好きだから。一目ぼれなんです。直哉さんの名前を知る前からずっと盗み見てました」 「知らなかった。光栄だね?」

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