9 / 184
ハイスペックな彼氏⑧
「おい、水瀬。まだ外来終わらないのか?トロイぞ?」
「あ、すみません。あと三人で終わりますから」
「外来の診察は丁寧にやればいいってもんじゃないからな?昼飯は?」
「ま、まだです」
「アホが。午後の外来がすぐ始まっちまうぞ?」
「すみません。急ぎますから」
「飯くらい食わないとぶっ倒れるぞ」
「はい。すみません」
また叱られてしまった……俺は大きく息を吐く。
つい、受診について来るお母さんの話をじっくり聞いてしまうから、診察が定時に終わらないんだ。隣の診察室の成宮先生なんて、とっくに午前中の外来診察が終わってしまっているのに。
「何で俺はこんなに駄目なんだろう」
机に突っ伏して頭を掻きむしる。
そんな俺は気付いてなどいなかった。
机の片隅に、缶コーヒーと、俺の大好きな焼きそばパンがそっと置かれていたことに。
【ハイスペックな彼氏 END】
ともだちにシェアしよう!