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猫と風鈴と七夕と①
私の故郷は旧暦で動いているので、七夕が1ヶ月遅れの8月7日になります🎋
そんな七夕に因んだお話になります…。
◇◆◇◆
ビピピピピッ。
「あー、お前熱あるわ」
「へ?」
「39.1℃だってさ」
俺に体温計を見せながら成宮先生が大きな溜息をつく。
「でも仕事行かなきゃ……」
「お前は馬鹿か、ゆっくり寝てろ」
無理矢理体を起こした俺を、そっと布団へと寝かせてくれる。俺が弱ってる時の成宮先生はとても優しい……期間限定で、だけど。
「今子供の間でいろんな感染症が流行ってるから、それを貰っちまったんだろう。仕方ねぇよ」
ベッドの端に座り、俺の頭を撫でてくれる成宮先生はかっこいい。本当に容姿端麗だなって思う。
「超好き……」
高熱で頭がボーッとする中、ポツリ呟く。
「とりあえず風邪薬飲んで大人しくしてろ。できるだけ早く帰るようにするし、薬も処方してくるから」
「すみません。ご迷惑おかけします」
「別に、今に始まったことじゃねぇだろ?」
口は悪いけど、俺に向けられる眼差しは酷く優しい。大事にされているのがよくわかる。
「じゃあ、行ってくるな」
「待って、千歳さん」
「ん?」
心細いから行かないで……そう言おうと口を開いたけど、その言葉を飲み込んだ。病気で仕事を休んだだけでなく、我儘言うなんて……そんなことできるはずなんかない。
「何、寂しいのか?」
「はい」
優しい瞳で俺を覗き込むものだから、俺は素直に頷いた。
「なんだよ。子供みたいじゃん」
「べ、別に寂しくなんかないです」
「ふふっ。可愛いな、お前は」
チュッと唇に柔らかいものが触れ、フニフニと啄まれた後離れて行った。
うつっちゃうじゃん……そんなことを感じながらも、そのキスを拒絶なんてできない。
吾輩は猫である。
名前は葵。只今、体調不良にて自宅療養中。
吾輩の飼い主であり、恋人の名前は成宮千歳。
「ったく仕方ねぇなぁ。あ、そうだ……」
なんやかんやで、寂しがる俺を置いて仕事に行くことに後ろ髪を引かれるのだろう。成宮先生は、俺が寂しがらないようにってエアコンの近くに、小さな風鈴を付けてくれた。
「これ、ずっと昔に買ったまましまってあったんだ」
エアコンの風にたなびいて、風鈴がチリンチリンと透き通った涼しい音を奏でる。そんな音を聞けば、夏真っ盛りなんだな……って感じられた。
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