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猫と風鈴と七夕と③
「こんなん、ただ成宮先生に依存してるだけなんかな?」
ポツリと本音を吐露すれば、一瞬びっくりしたように目を見開いた後、成宮先生がニッコリと笑う。
その笑顔はとても透き通っていて、今の俺には眩し過ぎるくらいだった。
「依存でも何でもかわまねぇよ。葵が俺を必要としてくれてるなら、俺はそれで十分だ」
そのままほっそりとした指で、前髪を搔き上げてくれる。
「それにお前が依存できる奴なんて、世界中に俺だけだろう?ならさ、いっぱい甘えとけ」
珍しく照れたようにはにかむ成宮先生を見れば、『好き』という感情が津波のように押し寄せきて、俺は意図も簡単にそれに飲み込まれてしまう。
「ヤバい……千歳さんが好き過ぎる」
「あははは!今頃?付き合って何年目だよ」
ケラケラ子供みたいに笑うその姿が、惚れ惚れするくらいかっこ良く見えてしまった。
「お前の彼氏、最高だろ?」
「はい」
思いっきり、成宮先生の胸に飛び付いた。
「葵、本当に可愛い」
そして、猫にしてみたら最高の褒め言葉をくれる。
好きで好きで仕方ない。
だから、ずっと可愛い葵でいるからね。
『葵、葵』
「ん?」
風鈴の音で、長過ぎる昼寝から目を覚ました。
夢の中で、成宮先生に名前を呼ばれたような気がする。でも気がしただけだった。だって、今俺は独りぼっちだ。
チリンチリン。
それでも風鈴の音色は心地いい。少しだけ、その音に耳を澄ませた。
スマホを見れば、暇を見つけてはLINEしてくれるのだろう。成宮先生からのメッセージがポツンポツンと届いていた。
「昔の夢を見てたのか……」
夢にまで成宮先生が出て来てしまう程、俺は彼のことを考え続けてしまっているようだ。
まだ熱が高いのだろう。頭がズキンズキンと脈を打つように痛いし、体が熱くて仕方ない。
でもそれ以上に、心が痛かったし寂しかった。
「千歳さん……会いたい……」
こんな時は、いい子に成宮先生の言う事を聞いて風鈴に子守りをしてもらおう。
布団を頭から被ってベッドの中で蹲る。
これじゃあ本当に、飼い主の帰りを待つ猫みたいだ。自分で可笑しくなってしまうけど、もっと可笑しいことに、それも悪くはないのだ。
絶対に帰ってきてくれる。
そんな確信があるから、猫は飼い主を待っていられるんだね。
「千歳さん、大好き」
もう一度呟いたら、夢の世界の住民がまた迎えに来てくれた気がした。
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