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あなた色に染められて⑩

 あれほどの超ワガママ、束縛男が元カノとご飯に行けなんて……余程の覚悟があったんだろう。  今日美優と一緒にいて、色々感じたし思い出しもした。女の子は俺が守ってあげなきゃだし、抱き締めてあげなきゃいけない。もし、付き合ったとしたらキスは自分からしなればならないし、セックスだって自分が奉仕しなければならない。  それは、成宮先生と一緒にいる時とは真逆の世界。  俺はいつも成宮先生から色々な物を与えられているし、キスだって待っていればしてもらえる。抱き締めてだってもらえるし、何より違うのは、俺は成宮先生に抱かれている。  先生と一緒にいる時とは全く違う世界に、俺は酷く戸惑ってしまった。  それに、女の子は柔らかいしムニムニした胸もある。ニコニコ笑えば可愛いし、か弱くて守ってあげたくなる。  自分がエスコートして、彼女をウットリさせて……そのまま甘く誘惑してベッドへと誘うんだ。 「そっか……俺は男だったんだ」  今更だけど、先生と付き合い出した時のことを、あまり覚えていない。思い出そうとしても、記憶を掴もうとした瞬間、まるでタンポポの綿毛のように空高くへと舞い上がって行ってしまう。  きっと、ちゃんと覚えてなきゃいけないはずなのに。 「寒っ!」  最寄り駅を出れば、あまりの寒さにびっくりしてしまった。あんなに昼間は日差しが差し込んで暖かかったのに。厚手のパーカーを羽織ってきて良かったって、心底思う。  帰ったらすぐにお風呂に入ろう。あ……すぐそこのコンビニで、先生の好きなおでんを買って帰ろうかな……ちょっとだけコンビニを覗いてみたけど、俺は先を急ぐことにした。  だって、1秒でも早く先生に会いたかったから。  女の子は確かにフワフワしてて、可愛らしい。  でも俺は、成宮先生のゴツゴツした指に触れられるのが好きだし、逞しい腕に抱き締められるのも好きだ。  成宮先生は女の子みたいに華奢じゃないし、可愛げなんかない。でも、何となく俺の顔色を伺って頭を撫でてくれるし、甘い甘いキスもくれる。  女の子みたいに抱かれることにも慣れたし、多分俺は、今更誰かを抱くことなんてできないだろう。そう……俺は、成宮先生の色にすっかり染まってしまったんだ。  でも、それでいい。  ううん、それがいい。  俺は急いで走り出した。早く、早く成宮先生に会いたくて仕方なかった。  

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