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苦いのに甘い飴①
こちらの作品は、紗くら様とのコラボ作品になります。
以前、紗くら様の作品に、葵君と成宮先生がお邪魔したのですが、今回は未羽君がこちらに遊びに来てくれました。
紗くら様、どうでしょうか?お声おかけいただき本当にありがとうございました。楽しく書かせて頂きましました(* ᴗ͈ˬᴗ͈)”
尚、ご自身で自衛していただきクレーム等はお控えください。
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「あー今日も疲れたぁ!」
俺は外来が終わった診察室で大きく伸びをする。
「腹減ったな……」
夏休み真っ盛りの今、小児科病棟は大盛況だ。出掛け先で怪我をしたり、感染症に罹ったり……。
世間が夏休みモードに突入すればする程、俺達は夏休みからどんどん遠ざかっていく。それこそ、盆暮れ正月なんて関係ない。
目まぐるしい業務の中、ふと白衣のっポケットに手を入れるとカサッという小さな音がする。
「なんだ?」
ポケットからそれを取り出すと、可愛らしい紙に包まれた苺のキャンディーだった。
どこにでも売っていそうな在り来りなキャンディーだけど、俺からしたらとても思入れのある物で……思わず口角が上がってしまう。
懐かしい……。
「あーん」
大きな口を開けて口に放り込めば、一瞬で甘酸っぱい味が広がっていく。
「うまぁい」
思わずニコニコしてしまう。それだけで、俺は懐かしい思い出への世界へ連れ去られてしまった。
◇◆◇◆
それはまだ、俺が研修医時代だった頃の話。
当時の俺はそれは駄目駄目で(多分今もだけど……)1日中、指導医の成宮先生に怒られてばかりいた。
相変わらず、成宮先生は俺以外の人には仏のように優しいのに……俺には塩対応もいいところだった。いつも誰もいない所に逃亡しては泣きべそをかく毎日。
それなのに、家に帰れば恋人としての成宮先生がいて……逃げ場なんてありゃしない。
あの頃は、医者を辞めることしか考えられなかった。
「しんどいな……」
窓の外を眺めれば、先程まで夕立が来そうな空模様で雷まで鳴っていたのに、今は綺麗な夕焼けが空一面に広がっている。
「翼があればな……」
最終的には、非現実な妄想の世界へ逃げ出そうとしてしまう始末で。
「辞めて、実家に帰ろうかな」
俺の精神状態は本当にギリギリだった。
「おい、葵。退院カンファレンスに行くぞ」
「あ、はい」
遠くから成宮先生の声が聞こえてくる。
「行くか……」
大きな溜息をつきながら、重い体に鞭打って
走り出す。
「ほら、もう少し頑張れ」
そんな俺を見て、仏頂面しながら頭を撫でてくれる成宮先生に、悔しいけど結局は癒されてしまうんだ。
「帰ったら、いっぱいキスしてください」
「ふふっ。いいよ。だから頑張れ」
「はい」
向日葵みたいに優しい笑顔で、成宮先生が笑ってくれた。
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