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暑中お見舞い申し上げます②
ジューッというベーコンが焦げる香りに誘われたのか、寝ぼけ眼の成宮先生が起きてくる。
「おはようございます、成宮先生」
「おはよ。暑ちぃ……」
「本当に。朝から暑いですね」
上は何も身に付けていない成宮先生が背中にくっついてくる。
「重たいぃーー!」
「うるさいよ」
「料理しにくいです」
俺のクレームなんて聞こえていないかのように、更にギュッとしがみついてくる。
「夏って朝から暑いんだなぁ」
俺は汗を脱いながら朝食を完成させた。
朝食を済ませ、今日は同じ日勤だからと出勤の準備をする。
洗面所で歯磨きをしていれば、そっと手を握ってくる。そんな成宮先生が可愛らしくて、ギュッと手を握り返した。
洋服を着て、出掛ける前の点検をグルッと一周。
「エアコン止めたよね」
エアコンが効いていない室内は既に蒸し暑い。
「葵、行くぞ」
「あ、はい!」
成宮先生が手をヒラヒラさせながら玄関で待っていてくれたから、嬉しくなってその大きな手に飛びつく。
「でもやっぱり暑いー!」
大きく息を吐いてから家を後にした。
病棟に行く前の医局で、最後にキスを交わす。
ここから、俺と成宮先生は恋人ではなく、上司と部下という関係になるのだ。
それはたった数時間だけなのに、なんだか凄く寂しくて……。
「成宮先生、もっとキスして?」
「エッロいなぁ」
キスをねだれば成宮先生が嬉しそうな顔をしながら、強く抱き締めてくれる。
「ん、ん……はぁ……ッ」
舌を絡め合ってお互いの唇を貪り合って。名残惜しそうに唇を離せば銀糸が2人の間を繋いだ。
「行くぞ」
「はい」
白衣を羽織り、俺は病棟へと向かう。
「やっぱり病院も暑いんだよなぁ」
俺は額に滲む汗を拭った。
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