40 / 184
暑中お見舞い申し上げます③
そこからは病棟でのカンファレンスも、ずっと成宮先生の隣にいたし、昼食も社員食堂で肩を並べて冷やし中華をすすった。
「やっぱり暑い……」
「な?」
午後の回診が終わった後、ベンチに座って炭酸飲料を回し飲みする。
「なんでこんなに暑いんだろう……」
外からは元気よく鳴く蝉の大合唱が聞こえてくる。その声が更に暑さを助長した。
「そんなにくっついてるから暑いんじゃない?」
「へ?」
「成宮と水瀬君、朝からずっとベッタリじゃん?今だって、こんなにベンチが広いんだから離れて座ればいいじゃないの?」
グッタリしている俺達を見て、成宮先生の同期である橘先生が呆れたように笑っている。
「うっせぇなぁ。ベッタリなんかじゃねぇし」
「はいはい。成宮が水瀬君から離れられないんだね」
「はぁ?黙れ。あっち行けよ」
悪態をつきながら、俺の肩にコツンと頭を乗せてくる。
「別にくっついてねぇじゃん」
全くその通りだ、と俺も思う。なんで橘先生はそんなことを言うんだろう……と不思議でならない。
「無意識、なんだね……」
クスクス笑う橘先生を首を傾げながら見送った。
今日も1日終わった……。時計を見れば19時。まだ早く帰れるほうだ。
「帰るぞ、葵」
「はい」
重たい体を引きずってエレベーターへと向かった。
ともだちにシェアしよう!