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意地悪なのに、優しい人⑮
「おい、こんな所で寝てると風邪ひくぞ」
「んッ……うん……」
突然、何か優しい物に頭を撫でられる感覚に、俺は夢から現実に引き戻される。
その温かい物が、成宮先生の手だと分かった俺は、無意識にその手に頬擦りをした。
「水瀬……ほら、帰るぞ」
そっと体を揺すられる。
でも、それさえ心地よくて……俺はフニャリと微笑んだ。
「成宮先生、紗羅ちゃんの事でこんな時間まで病院にいたんですか?」
「あぁ?そんなん、どうでもいいだろう?」
「ありがとうございます。俺、先生の事誤解してました。あんな態度とってごめんなさい」
俺は、成宮先生の白衣をギュッと掴んで、それに顔を埋める。
「俺、先生の事……全然わかってない……」
「いいから水瀬、もう帰るぞ?」
「嫌だ、帰りたくない」
「お前は、子供か」
「そうです。子供です。だから……」
「だから?」
俺が見たことがないくらい優しい顔で、俺の顔を覗き込んでくる。
その頬にそっと触れた。
「俺、頑張ってるからご褒美ください」
「何?お前、ご褒美欲しいの?」
「はい。欲しいです」
トクントクン。
「あ、まただ……」
俺の心臓が甘い不整脈を打ち始める。
呼吸も苦しいし、体が火照って仕方ない。
そして、この不快な症状を成宮先生にどうにかして欲しい……そう思ってしまって、無意識にその体に自分の体を擦り寄せる。
深夜までの残業で上手く働いていない頭に、疲れきった体。それに、薄暗い室内が有り得ないくらいに俺を大胆にさせる。
ぶっちゃけ、今の俺は寝ているのか、起きているのかさえわからない状態だった。
夢ならいいな……って思う。
これが夢だったら、俺はもっと大胆に貴方に甘えられるから。
「ご褒美ちょうだい?」
「いいよ」
そう囁いた成宮先生が、フワリと俺の体を抱き上げたから、俺は必死にしがみついた。
そのまま、ソファーに座った成宮先生の膝の上にちょこんと座らせられる。
温かい成宮先生の胸に、俺はそっと体を預けた。
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