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意地悪なのに、優しい人⑱
成宮先生と一緒に、沙羅ちゃんのご家族に『非常に危険な状態である』という説明をした。
我が子のこんな告知を聞けば、泣いて取り乱すのかなって思っていたけど、案外冷静に説明を聞いている。俺は、それがとても不思議だった。
二人きりになった時に、成宮先生にそっと問い掛けた。
「なんで沙羅ちゃんのご両親は、あんなに冷静だったんですか?」
「沙羅ちゃんはさ、生まれながらに病気を持っていた。今まで何回も生死の狭間をさ迷って、なんとか一命を取り留めて……の繰り返し」
成宮先生が、自動販売機で買ったコーヒーを一本俺に手渡してくれる。
自分のコーヒーはブラックなのに、俺に手渡したコーヒーには砂糖が入っていた事に、少しだけ感動してしまった。
「沙羅ちゃんのご両親は、今まで精一杯頑張ってきた。だから、きっと覚悟みたいなものがあるんじゃないかな……」
「覚悟?」
「そう。俺は親になったことはないし、これからもなることはないから、良くわかんねぇけどさ」
「え?」
「ただ、親が子供を思う気持ちって凄いよ。これだけは確かだ」
その言葉が、俺の胸に強く響く。
だから、
『なんで先生は、親になることがないんですか?』
って聞いてみたかったけど、俺はその言葉を飲み込んだ。
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