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意地悪なのに、優しい人㉕
「お前さ、本当にトロイのな?」
「は、はい、すみません」
「何回言えばわかるの?この薬は単価が高いから使うなって、あれ程言ってんのに。こんなにふんだんに使いやがって」
「ごめんなさい」
「マジで小児科病棟を破産に追い込みたいわけ?」
「そ、そんな滅相もない!!」
全ての研修を終えた俺は、迷うことなく皆が避けて通る小児科病棟に希望を出した。
そして、成宮先生の厳しいご指導が幕を切ったのだ。
俺は、あの後すぐに成宮先生のマンションに引っ越して、甘い同棲生活を開始させた……はずだったのに。
家でも職場でも、このハイスペックな神と召使の関係は変わらない。
いつも成宮先生に怒られて、謝ってばかりいる。全く進歩なんて見られなかった。
そんな自分に日々落ち込む毎日で……泣きたくなることなんて、日常茶飯事だ。
「本当に仕方ねぇな。急いで残りの仕事片づけて、さっさと帰ってこい。お前の好物のカレー作って待っててやるから」
「え?カレーですか?」
「そう。しかもシーフードカレーだ。だから後少し、頑張れ」
「はい!」
子供みたいにカレーなんかに釣られた俺は、目をキラキラ輝かせてしまう。
そんな俺を見た成宮先生が、
「本当に単純で扱いやすい」
ククッと喉の奥で笑っている。
「それからさ……」
突然抱き寄せられて、チュッと唇を奪われる。そのまま首筋に舌を這わせられ、ジュッと強く吸い上げられた。
「夜はベッドで、散々可愛がってやるからな」
「え?」
「だから、早く帰って来いよ」
意地悪く、敏感な胸の突起をそっと撫でられた後、クイッと押し潰される。
「あぅ……」
それだけで、甘い電流が頭から爪先まで駆け抜けて行くのを感じた。
「葵は可愛いな」
その笑顔に、俺はすっかり骨抜きにされてしまう。
だって、成宮先生は本当にズルい。凄く意地が悪いのに、本当に優しい。
どうぞ、俺のことを好きにしてください。所詮俺は、貴方に惚れ切っているのだから。
「どうぞ、貴方のお気に召すままに」
ほら、耳元でエロい事言うから、俺の心臓がまた痛い位に高鳴って、呼吸まで苦しくなってきたじゃんか。
もう、本当に勘弁して欲しい……。
【意地悪なのに、優しい人 END】
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