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ごめんね、大好き⑥
「柏木、見るな!」
成宮先生は咄嗟に俺を抱き締め、柏木から俺を隠してくれる。
なぜなら、俺はほぼ全裸だ。
それに、俺は親友の柏木に、女の子みたいに股を開いてる姿なんて……死んでも見られたくなかった。
ゼンブガ、オワッタ。
俺の中で、何かがグラグラと音をたてて崩れていくのを感じた。
「ご、ごめん!!まさかやってたなんて!?」
柏木がパニックになっている。
「ごめん!ごめんなさい!水瀬、成宮先生!」
目の前で手を合わて、深々と頭を下げている。
違う、柏木が悪いんじゃない。こんな光景を目撃してしまった彼だって、立派な被害者だ。
全部、この年中発情期イケメン猿と、意志が弱すぎる下半身ユルユル猿が悪いんだ。
「どけよ、アホが!?」
「あ、葵……?」
低い声で唸った俺は、成宮先生を思い切り突き飛ばした。
空手をやっていた男に突き飛ばされた成宮先生は、床に吹っ飛ばされている。
「あ、葵……」
「もーーーーーー最低だ!?俺は、俺はなんてことを……わぁーーーーーー!!」
静かな医局に響き渡る、悲痛な断末魔。
「帰る!!どけよ!?」
「はぁ、待てよ!?」
「うるせぇよ!!どけって言ってんだろ!?」
いつも小動物みたいにフワフワした俺の、汚い言葉遣いと、鬼のような形相に成宮先生と柏木が呆気にとられている。
俺は、悔しくて、情けなくて、恥ずかしくて、みっともなくて……涙が溢れそうになるのを、唇を噛み締めて必死に堪えた。
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