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ごめんね、大好き⑦
脱ぎ散らかした洋服を手早く着て、荷物を掴むと柏木を突き飛ばすようにドアに向かう。
そんな俺の腕を、成宮先生が掴んだ。
「待って!待てよ、葵!」
「うっせぇな、黙れ!それから離せ!」
俺は成宮先生の腕を、力任せに振り払った。
「もう、お仕舞いだ」
「は?」
「もう終わりにしたい…… 」
噛み締めた唇が、カタカタと小刻みに震えている。
大きな瞳からは、堪えきれなかった涙が溢れた。
「葵……」
「別れてください?それから俺、当分仕事も休みますから……」
「別れるって、なんでだよ!?」
「俺は、柏木に女みたいに抱かれてるとこなんか……死んでも見られたくなかった」
洋服の袖で拭っても拭っても、涙は次から次へと溢れ出す。
「もう貴方と付き合ってらんねぇ!成宮先生、別れましょう。もうこれで終わり。それから、当分、有給を使わせてください」
俺は必死に涙を拭って、最後に成宮先生を見つめた。
成宮先生のあまりにも傷ついたような表情に、一瞬だけ心が揺らぐ。
でも、俺はきっと、自分と貴方を許すことはできないだろう。
「さよなら」
そのまま俺は勢い良く走り出し、誰にも会わないように階段を駆け下りた。
心の中はグチャグチャで、どうしたらいいのかなんて分からない。ただ、涙は止まってくれなくて、俺は夢中で現実から逃げ出すことしかできなかった。
「成宮先生、本当にごめんなさい。変なタイミングに来ちゃって……」
柏木が成宮先生に泣き出しそうな顔をしながら、深々と頭を下げた。
「いや、柏木君のせいでも、ましてや葵のせいでもないよ。全部、俺が悪い……」
「成宮先生……葵は、許してくれるでしょうか?」
顔を引き攣らせながら、柏木が成宮先生を見つめる。
「許すも何も、葵は怒ってるんじゃないよ」
「え?」
「葵はあんな所を見られて、どうしようもなく傷ついちゃったんだ」
成宮先生が寂しそうに笑う。
「ごめんな、葵」
俺は、彼に出会って初めて謝罪なんてものをされたのに、それを聞くことはできなかった。
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